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2012年06月01日(金) ■ |
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『LYNX Live Dub』Vol.1、『Tag of war』Vol.2 |
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『LYNX Live Dub』Vol.1『LYNX』@SARAVAH Tokyo
スズカツさんのオガワシリーズ、『LYNX』『MYTH』『HYMNS』をリーディングで連続上演するプラン。最新作である『CLOUD』も含め、いずれ舞台で連続再演する目標…願いが込められてのプレゼンテーションとも言えるかな。
事前にweb上で上演台本が公開され、「それをダウンロードして(中略)会場内でお手持ちのスマートフォン、タブレットなどで、ご自分も目で追いながら舞台を想像するのがお勧めです。」とスズカツさんからのツイートがあり、スマフォ、タブレットどころか携帯も持っていない自分は暗澹たる気持ちになりましたよ。いずれ携帯端末持ってないと手に入らない情報ばかりになって、公演やってたことを後で知るような情報弱者になるんだろうなーあっはっは(笑泣)。
とは言うものの、まあ頭に入ってるからいいか…と言う傲慢な気持ちもありました。やなファンだわー。せっかく目の前に役者と照明と音響が在るんだから、字面追うよりはそっちを観る、聴くことに集中したいと言う思いも正直あったし、敬意としてもそうしたいです。あと個人的には、近くで液晶画面光らされたりするのが苦手です。スタンディングのライヴ会場だと自分がそこから離れればいいけど、演劇や映画の会場ではそうはいかないですからね。極端な話、字面を追って想像するのは家で出来る…て言うかそれ楽しそう(笑)何時から読むよーて告知して、各自好きな場所で読んで、終わった順に感想ツイートしてくの。で、ひとによって読む速度が違うから、上演時間も違うの(笑)。
とは言え、実際今回のリーディングが『LYNX』初見のひともいる筈。そして上演台本はリーディングのために書き直されたものではない。そうなると所謂沈黙になっているト書き部分で何が行われているかを知るガイドとして、その場でテキストを目にすることが必要な場合もあるのでしょう。それを考慮してのことだったのかも知れません。
登場人物5人に対して、アナウンスされていた出演者は4人。これは当日会場で残るひとりが発表になるのか、それともスズカツさんが出るのか?誰が誰をやるんだろう、と想像する楽しさもありました。入場すると聴こえてくるのはいつものジョン・レノン『Rock 'n' Roll』。フロア中央に椅子が一脚、それを取り囲む形で観客席が設置。かなりの至近距離、最前列と演者は1mも離れていないくらい。これは演者も相当緊張するだろうなあ。
清水靖晃「Washing Brain Machine」が流れ照明が落ちる。現れたのはオレノくん…ん、てことはエンドウがオレノくん?あのopの数分は本当に長い。初演のエンドウ、松重豊さんが「あれ、本当に緊張する。何もしないで数分立っているだけってすごく怖い」と話していたことを思い出す。そのうえこの距離…手とか震えた日にゃあまるみえだよね。しかしオレノくんは静かにそこに在り続けた。ぽーんと自意識捨ててる感じ、見事。そして暗転。
ライヴダブと銘打っていたので『ウェアハウス』のような実験的な要素を前面に出すのかな、と思っていたのですが、今回は上演台本を忠実に再現する、と言うのが狙いだったようです。選曲も三演と同じ、音響も鳴らしどころは同じだったかな。こういう作品があります、と言うプレゼン的な押し出しを強く感じました。配役はオガワ=オレノグラフィティ、エンドウ=田口トモロヲ、ウサミ=山岸門人、イタバシ/アマリ=伊藤ヨタロウ。
興味深かったのは、テキストから逸脱しない、動きに制限がある、イタバシとアマリをひとりが担う、前述のとおりopのエンドウのみオレノくんが体現したところ。そしてこれは事前にルールとして設けられていたことなのか、自然とこうなったのかは判りませんが、会話のシーンで演者は決して目を合わせることがありませんでした。中央に座ってテキストを読むオガワ=オレノくんに、他の登場人物がフロアのあちこちから現れては語りかける。全員、手にしたテキストから目を離さない。しかし数ヶ所だけ、オガワがエンドウを、エンドウがオガワを見るシーンがありました。目と目が合うことはなく、片方が片方を見詰めるといった形です。オレノくんを見るトモロヲさん、トモロヲさんを見るオレノくんの目は、非常に印象に残りました。
スズカツさんの舞台でよく設けられるフリーな部分はありませんでしたが、テキストから逸脱しないならではのインプロはトモロヲさん、ヨタロウさんがのびのびなさっておられました。声色を変えたり、フロアを動き回ったり。このひとたち目の前に赤いボタンがあったらそれが何のボタンかわからなくても絶対押すタイプだよ(笑)。しかしこれのおかげでガチガチなフロアがリラックスしましたし、見える風景がより拡がりました。門人くんはあの身体能力を封じてい乍ら存在感をしっかり残す。あの声を持っている、と言うのは大きいけれど、それは相手の言葉を受けとめて返すと言う、しっかり磨かれたスキルがあるからこそより光るのだと思います。あ、それでふと思ったけど、彼の声のトーンは初演でウサミを演じた大石継太さんに通じるものがありますね。
金髪のオレノくんがエンドウとして現れたとき、再演で田中哲司さんが演じたエンドウのベビーブロンドを思い出してはっとしました。哲司さんのエンドウは、歴代エンドウのなかで最もLYNX=オオヤマネコなヴィジュアルだった――静かな獣の美しさをまとわせていたと個人的には思っています。同様に再演のアマリ=藤本浩二さんのアプローチも、鮮やかなものとして印象に残ったものでした。オガワシリーズ三部作の一作目としての『LYNX』の完成度は素晴らしいものでしたが、その前、初演や再演の『LYNX』もずっと大事に憶えていたい作品です。50歳のオガワを演じたトモロヲさんが、まだ20代のオガワ=オレノくんと言葉を交わす、と言う構図にもいろいろなことを思いました。いいもの観たな。
上演後スズカツさんのご挨拶、本音がぽろりか。その後『LYNX-CLOUD連続上演推進会議』と言う名の呑み会が行われるとのことでしたが、会場をあとにしました。
■関連記事 ・トモロヲ×オレノ×モンド×ヨタロウ鈴木勝秀の演劇ジャムセッション 『LYNX Live Dub vol.1 LYNX』 | ダカーポ - The Crossmedia-Magazine ・LYNX Live Dub 鈴木勝秀〈構成/演出〉 vol.1 LYNX - イベント告知 - webDICE
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LÄ-PPISCH 25th Anniversary『Tag of war』Vol.2@LIQUIDROOM ebisu
そんな訳で結局サラヴァとリキッドをハシゴ。もともとはこちらのチケットを先にとっていて、うーんVol.1も行く訳だし…と思いつつ『LYNX』を予約した。しかしどうしてもチケットを手放せなかった。渋谷と恵比寿だし、『LYNX』の上演時間は90分くらいなので、30分くらいは聴けるんじゃないか……?走った走った。
結果的には無理して行ってよかった。防音扉を開けた途端耳に飛び込んでくる「旭タクシー」!リキッドフロアへの入口はステージ側なので、観客の表情がまず目に入る。笑顔、笑顔。
「MATSURI・365」で本編終了、アンコールはきた、「プレゼント」!!!そして「ANIMAL BEAT」。聴けた4曲全てが一昨日に演奏していない曲だった。後で聴けば、Vol.1とVol.2は一曲も被りのないセットリストだったそうだ……すごいな。奥野さんのがんばりデカイわ。いや、しばらくやってない曲はコードも思い出せないと言っていた上田現同様、メンバーもきっと忘れてるから相当練習した筈だわ(笑)。コレクターズを観られなかったのは残念。
思えばサラヴァでジョン・レノン、リキッドでポール・マッカートニーと言う(『Tug of war』はポールのアルバムタイトルだよ)繋がりもあったな。そして数時間の間にトモロヲさんとマグミを続けて観られたのは感慨深く不思議な気分だった。このふたり、自分のなかでは通じるものがある。ノンシャラン、狂気、殺気、パンク、と言うキーワード。ぼろぞうきんのようになって帰宅。
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セットリスト
01. Yeah! Yeah! Yeah! 〜Beat Up And Down〜 02. F5 03. Toys 04. バッタ 05. water 06. 楽園 07. miracle 08. 東京ドッカーン 09. サイクリング 10. 回送電車 11. HARD LIFE 12. 旭タクシー 13. MATSURI・365
encore 14. プレゼント 15. ANIMAL BEAT
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NEXUSのライヴレポートはこちら→・『レピッシュ×コレクターズ、25周年の二組による「今が最高!」な共演』
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