I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME
|
|
2012年03月17日(土) ■ |
|
『7DOORS〜青ひげ公の城〜』 |
|
『7DOORS〜青ひげ公の城〜』@東京グローブ座
バルトークのオペラと七つの大罪をモチーフに構成された舞台です。
七つの扉を開けたいと思うユディットにはまず好奇心と言う欲がある。そしてその扉の住人は、ユディット自身が犯した罪を鏡のように映し出す。しかし欲望というものを持たない人間はいない、ではどうするか。ユディットの選択は観客にも投げかけられるものです。
七つの扉を順ぐりに開けていくと言う構成を単調に感じる部分はありました。思わず「えーと今4つめだから、あと3つあるんだなー。上演時間が120分で、今○分くらいだろうから、あとはひとつの部屋をおよそ○分で巡り、残りの○分で収束する訳か」と考える隙がこちらにも出来てしまった。この辺りは七つの大罪を扱う、と決めた時点で自明であり、セット転換なしで全ての部屋を巡るので、能動的に想像力を働かせる必要があります。非常にシステマティックでシンプルな舞台。
勿論それぞれの場所にはそれぞれの魅力を持った役者がおり、持ち味を発揮していきます。城の外にいる、城に侵入する陰山さんと菅原さん、水さんとヨタロウさんのインプロ的なやりとりやSUGIZOさんのヴァイオリン演奏、Spiさんの台詞が英語、と言ったノイズ(この場合アクセントやゆらぎと言った方がよいだろうか)は楽しく観られるパートでした。
ストーリー的にはユディットの兄さんにいちばん心が寄ったなー。ユディットに対して特別な感情を持っているのは間違いないだろうが、その思いを彼は決して表には出さない。個人の心のなかはいくらでも自由で、誰にも譲れないものだ。神はその心をも掌握しているので、思うことすら罪になる訳です。この辺りは『90ミニッツ』でも考えた、信仰に対する恐れと畏れの違いでもある。信仰を持つ人間は、自分の思いをも神が見ている、と日々悔い改めて過ごそうとする。思いそのものを罪として罰するか、その思いを秘めるところに尊厳を見出すか。妹としてのユディットを案じることを選んでいたあの兄に安息の場があればいいのにと思いました。しょんぼり。あー、あのあと父さんと兄さんどうなったんだろ。
そうそう、そんで父さんを演じた陰山さんが七つの大罪では強欲にあたる役を、兄さんを演じた菅原さんが憤怒にあたる役だった構成にもいろいろ考えたな。話の流れからしても、わーい娘を売ってウチも裕福だーいと喜ぶ父さんが強欲ってのはすごく解りやすかったんだけど、兄さんが憤怒、と言うのにはひとひねりある感じでいくらでも深読みが出来る。
個人的には、自らを職業演出家と名乗るスズカツさんが、作品によってどこ迄俺俺を表出させるか、あるいは俺俺を背景に潜ませるかのひとつの基準として、ジョン・レノンの『ROCK'N'ROLL』が客入れに流れているかで判断するところがあるのですが、今回はピンクフロイドの『MEDDLE(おせっかい)』が流れていました(余談だが開演前に三階席のトイレに行ったら誰もおらず、シーンとした個室でこれを聴くのは非常に怖かったです・笑)。そして開幕直前に流れたのは同じくピンクフロイドの「Wish You Were Here」。そう、『MYTH』の重要なシーンで使われていた曲です。青ひげ公の台詞に『欲望という名の電車』のブランチの要素を感じたり、『LYNX』『MYTH』『HYMNS』『ウェアハウス』を連想する登場人物の関係性もあり、興味深く観ました。思えばあの役割を女優さんが担ったのは初めてではないか。
共通認識をイメージの共有として捉えると、やはりデザインに惹かれます。十字架のポーズ、それを象った照明、登場人物がまとう衣裳。そして色彩。
あとおぼえがき。
・前日DCPRG新譜全曲自主試聴とかやってて、日本語のラップやリーディングのリズム感と声のよさについて考えてたので、ヨタロウさんと水さんのやりとりはドンズバだったなー ・陰山さんの日替わり台詞(おそらく)が老眼萌えだった(笑)
|
|