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2012年01月24日(火) ■ |
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『ある女』(菅原さんver.) |
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ハイバイ『ある女』@こまばアゴラ劇場
さて菅原さんver.。ネタバレありますので未見の方はご注意を。
うわあん菅原さんの女装、中途半端に綺麗(ほめてる)だから今回はタカコ寄りで見ちゃったよ!やっぱ男がひどいよー!不倫してる男はこれとかNODA・MAPの『ザ・ダイバー』とか観ればいいと思うよ……ひいー(泣)。
そもそも森って、結婚してるってのを言わなかったのはまあタイミングを失ったとかあるとしても、部屋を別に借りるってのがもうさ…言い出せなくてぐずぐず嘘を重ねるタイプ。こういう男は追及されてから「あのときの気持ちは本当だったんだ!」とか言うんだわね…で、実際それはホントにそうだったりするんだわ。そして中盤の映像部分の独白にあるように現実的には何の役にも立たない哲学をこねくりまわす(ここらへん大久保にも通じる訳で)んだよねー。め、めんどうくさい………。
そうそうそこで面白かったのは、大久保の哲学に関しては意図的に聞き流せるような仕掛けがある(映像のナレーションもそうだし、立ち呑みバーでガネーシャの話をしているシーンもそう)のに対し、森の独白はしっかりその思いを観客に伝えようとしていたところ。それを提示した後に結婚を控えた部下にいいことを言う森、嫁と別れたとタカコに告白する森のシーンを入れて、おっ森いいとこ見せ始めた!と思わせといて、ご懐妊の嫁連れての箱根旅行でタカコとバッタリ、と言う身も蓋もない結末を用意するところ。彼の哲学はぺらっぺらですよーって引導を渡したようなものです。この容赦のなさ、すごいわ岩井さん。
しかしこのボタンのかけちがいっぷり…もし森が告白したときタカコが「今の状況大丈夫になってきてる」と言わなかったら?とか思っちゃうよね………たらればって無力だわー。序盤の「お風呂すごく綺麗になったよ」と浴槽をキュッキュッ、と鳴らすシーンが思い出されてドーンときた。そうそうこういうちょっとした幸せな光景が要所要所で入ってくるんです。ふたりが他者と関わらず、ふたりだけでいる状況では彼らは幸せなんだよね。
どんな状況になってもあれよあれよと受け入れてしまうタカコは度量が大きいと言えば聞こえはいいが、その包容力と言うか受け入れる力をもっと他のことに使いなよ!と思わせられること半端ないですよ。方向が間違ってる……。そんな彼女が最後に暗闇でぼそぼそと語る諦めと痛切な思い(それが等々力さんとエッチなことしようよって話題なのがまたもやーんとするのだが)が苦しくせつなかったです。で、せつなくなった自分にもやもやするよ…あんなに笑って観てたのに、予想以上にダメージ大きいです……。
菅原さん、あの面妖だか妖艶だかな顔立ちとナチュラルメイクがこの人物像に異様にハマる。隙あらば変顔しようしようとしてるのにふとした瞬間に繊細な表情を見せ、絶妙なスカートの丈からすっと伸びる美脚(そうなの女性的な美脚なのこれが)にドキッとさせられます。ロン毛なので地毛を使うかなと思っていたけど岩井さん同様ショートボブのヅラ着用でした。ここらへん岩井さんの女装がほぼいつもこれなんで合わせたのかな。そもそも「競演とか考えてない。演技プランは全部永二くんで、僕はそれを稽古場で見て真似する」と岩井さん仰ってましたが(アフタートークでも言ってた)やっぱり演じる身体と声が違うと印象も変わりますね…岩井さんのタカコはつきはなして見られるクールさ、菅原さんのタカコはつい気持ちが寄る危うさ。
現代口語ならではの女性の言葉遣いも状況を把握するのに役立つなー。「おんぶしてけー」とか。普段そんな「〜なのよ」「〜だわ」って使わないもんね……声色も投げやりだったりするじゃない。そうそうその投げやりな物言いがラストシーンですごく効く!「彼氏みたいなの作ってくる」も名言です。そして「脱ぐぬぐぬ、ぬぐぬぐぬ(♪トルコ行進曲)」の爆発力はすごかった。実際に言いそうな状況ではあるわ…これ台本指定なのか菅原さんのプランなのかすごく気になる(笑)。
両方観て思ったのは、初見時はスカしてタカコや男性たちには知っているところがある、とか言ったけどそれどころじゃないわ、自分にもある要素だわ!だから共感しちゃうしダメージ大きいんだわ!と言うことです(笑)。いやー面白かった(青ざめ乍ら)、正直に素直に自分と向き合おう……。
タカコをとりまく人物たちを演じた面々の、ふわーっとしたぼやーっとした得体の知れなさも効果的。彼らの存在がタカコの地獄巡りを一種おとぎ話のように見せ、そのおかげで最後迄笑って観ることが出来る。そして笑って観たからこそ最後に複雑な痛みを残す。タカコから男を奪っていく(と言うか男がこっちに寄って行く訳だが)別々の女性を両方とも永井さんが演じていたり、『て』でDV暴君を演じた猪股さんがタカコをただただ受け入れる等々力を演じていたのも興味深かったです。等々力とタカコが滝を見るシーン、うっかりタカコと一緒に泣きそうになった!男性陣のネジの外れっぷりもよかったわー。そして上田さんの声とニヒルな表情、あれで厳しいことバシバシ言うのがすんごい魅力的だった。で、あんだけ正論言っといて最後「お父さんのこと、あれ、適当です」なんだもの、最高。
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この日は天野天街さんを迎えてのアフタートークがありました。ノーメイクの岩井さんはタカコ役のときより目がどんよりしてなくてシュッとしてたよ!タカコの目は映像でも印象的だったけど文字通り魚の死んだ目のようだったんだよー。
天野さんの感想としては「死にそうだなーと思った」。岩井さん「えっタカコじゃなくて?オレが?」と狼狽(笑)。あーニュアンスとしては理解出来る…なんかすんごい死の匂いが近い…ストーリー自体の結末だけでなく。今回3人の女性に取材して、ア○ム徳永のセックス教室にも実際に行って取材した、と言う岩井さんに対し天野さんは「自然と経験したことが出てくることはあるだろうけど、取材はせず、書きたいことが浮かんでくるのを待つ」書き方だそうです。ひたすら机に向かって待ってる。「それって努力が目に見えて現れないので周りに理解されなさそうで辛いですね」って言われてた(苦笑)。
興味深かったのは「女性をおじさんが演じてると、もっと酷い目に遭わせよう遭わせようとなる」って話。そもそも悲惨な話をホントに女性が演じると洒落にならないツラさなのでおじちゃんが演じると言うフックなのですが、相乗効果も生まれる訳ですね。そして終盤の暴力描写、このシーンを「なつかしいわー(ほっこり系で)」と言った方がいて、岩井さん「ゴッツイわー」と思ったそうです。今回内容が内容なのでちゃんと感想話してくれるひとがいなくて、どう思われてるのか…と仰ってました。確かに面と向かっては感想言いづらいでしょうね。しかしその数少ない反応に「なつかしいわー」て、それ確かにゴッツい(笑)。
質問に答えて菅原さんもちょこっと登場。アゴラ劇場はステージの下に楽屋があるようで、下からの出入口から首だけひょこっと出して質問に答える菅原さんはプレーリードッグのようでした。「タカコのような女性をどう思いますか」って質問だったんだけど、「男にしてもああいう、つい嘘ついちゃったりとか思い当たる部分もありますし…」とかもごもごとなって質問に対する答えになってなかった(笑)。
あと猪股さんがオリザさんに似てる、いやオリザさんはもうおばちゃんみたいになってるって話にウケた。
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