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2011年09月23日(金)
『無防備映画都市 ―ルール地方三部作・第二部』

『無防備映画都市 ―ルール地方三部作・第二部』@豊洲公園西側横 野外特設会場

フェスティバル/トーキョー(F/T11)野外公演二本目。水曜日からだったのですが、台風の影響で二日遅れの本日初日となりました。美術の再設営や機材復旧、リハ等があるため一日だけの中止では済まなかったようです、大変…そして中止になった分の振替公演は金曜日と土曜日にぶっこんでやることに。もともとの公演は18時開演ですからその後、21:30からと言う強行スケジュール。た、大変……。

フェスティヴァルのプログラムですし、来日公演でもあるので、本来の千秋楽である25日以降に振替公演を入れることは出来なかったのでしょうね。とてもエネルギッシュな作品だったので、出演者もスタッフも本当に大変だと思います。無事全ての公演が終わりますように。そしてめっちゃ寒いです!行かれる方は是非防寒の用意を。

演技エリアは広大で、パトカーもトレイラーも走ります。遠景には書き割りの街並。その背後には豊洲のベイエリア。東京タワー迄見通せるこの借景は壮観でした。入場した時間帯は夕陽が沈む直前、厚い雲の間から差す陽光は正にヤコブの梯子。作・演出のルネ・ポルシュ、美術のベルト・ノイマンが提示する移動式劇場が、ここ東京ではこんな風景になる。あっと言う間に非日常へ引き込まれます。サーカス小屋のようなテントの下にある客席エリアにはケータリングカーも出ており、ビールやお菓子の販売が。上演中も飲食自由と言うおおらかな雰囲気です。DJブースのようになっている音響卓からはゴキゲンな音楽。

出演者が場内をうろついており、その様子はそのまま作品世界へと繋がっています。擬似チネチッタへ集まってくる撮影クルー。煙草を吸い乍らくつろぎ、笑顔でお互いを迎え、挨拶し、ハグして本番への意気を高める。出演者としてのそれなのか、役柄としてのそれなのか?やがてひとりが弾かれたように車に乗り込みエンジンをかける。お、始まった!

引用された映画はロッセリーニの『無防備都市』『ドイツ零年』、フェリーニ『8 1/2』。『8 1/2』しか観ていないので個人的にはかなり取りこぼしあったなー。『ドイツ零年』は同じ日の昼にF/Tゼミの上映会があったんだけど、定員いっぱいで入れなかった。ドイツ語上演、字幕を読む作業ととても広い演技エリアを目で追う作業を同時に行うため、かなりの集中力と体力が要りました。それでも相当面白かったので、知識があるひとはもっと楽しめると思います。

映画を撮るために集まってきた五人の出演者+スタッフ(カメラ、プロンプター、集音マイク等)は、予想外のチネチッタの風景とお互いのディスコミュニケーションに足を取られ右往左往。何の映画を撮るのか?この役は彼がやるべきではないのか?スターがトレイラーの電気を使い過ぎて停電になる!食事は?“東側”の芸術とは?膨大な引用とユーモア溢れるドタバタコメディ。しかしそこには過去の戦争に苦しんだ者たちの歴史も顔を出す。思えばドイツも敗戦国だ。奇妙なシンパシーを感じる。あのプロンプターは本当にその職務を果たすものなのか、それとも彼女も“役者”なのか。スクリーンに映っているのはカメラを構えている彼の撮った映像なのか?同様に役者たちが話す言葉を拾っているのは本当にあの集音マイクなのか?現在、過去、虚構、事実。目まぐるしく上演される作品は変わり、チネチッタは大混乱に陥る。

彼らの怒り、悦びは過去から現在へと連なっている。虚構を演じる役者は真実を見出す。カーテンコールでの彼らの弾けるような笑顔はとてもチャーミングで、かつ生命力に溢れるものでした。

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よだん:

・当日配布のリーフレットに、『ルネ・ポレシュの稽古場』と題された原サチコさんのテキストが。そうだー原さんって今ドイツ在住なんだよね。ルネとは三作品仕事をしたそうです

・客席の椅子、多分先週の『わたくしという現象』で使われていた椅子だった。あのとき津波のような大きな力に流されていった椅子に今自分が座っている。ちょっと不思議な気分になった

・明日クラブチッタに行くので、チネチッタがらみの作品を観てニヤニヤする等

・で、クラブチッタに観に行くのはレピッシュで、レピッシュと言えば見世物小屋とフリークスの名作ヴィデオクリップ「ハーメルン」。あの美しくも物悲しい雰囲気が今日の客席の風景と繋がりせつなくなる等