初日 最新 目次 MAIL HOME


I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME

2011年07月16日(土)
『破天荒の浮世絵師 歌川国芳』

『破天荒の浮世絵師 歌川国芳』@太田記念美術館

後期『遊び心と西洋の風』、戯画・狂画、美人画・風俗画、洋風画の3セクション。ねこ!きんぎょ!たぬききつねねこねこキャー!わあーいたまらん、武者絵・妖怪画と同じひとが描いたとは思えんよ……。前期と後期で展示内容を変えたのは、同時期に静岡美術館で開催されている『没後百五〇年 歌川国芳展 幕末の奇才浮世絵師』と展示作品を入れ替えるためと言う実質的な都合もあったのでしょうが、テーマの分け方からして上手い!と言う感じでした。

洋風画のセクションは、今回新しく見付かった資料として、国芳が洋風画を描いたときに参考にしたと思われる蘭書『東西海陸紀行』の図版が並べて展示されていました。これがもう、なんつうかもう憑依か!てくらい同じなの。パクりってのとは違うんだよ…もはやその図版と同じ線、タッチになっちゃってるの。国芳が他に描いているものと全然違う線がそこにはある。こういうの見ると、もう器用を通り越してなんでも描けちゃうんじゃね?このひと…とか思う訳です。でも、それが日本の風俗、景色に折り込まれているので、やっぱり国芳の絵になっているのです。この引き込み力と言ったら!

画力としての腕もだけど、とにかく目がよかったんだろうな……見たそのままを描けるんだ(これ実はなかなか出来ない。手に目は直結しない、手が目に追いつかない)。空間も込みでちゃんと見えてる。で、その境地迄到ると目に見えないもの=見たことないもの迄自在に描けるようになるんだ。だから妖怪とかあんな、見てきたんか!てなレベルで描けちゃうんだな……武者絵もこれはこのひとの特徴でもあるけど、かなりエグいし血みどろだったりする。これもハーイすぐそこで見てましたーみたいな臨場感でシレッと描いてあって相当怖いんですよ…すごいな……。

そんなひとがねこ大好きで、擬人化されたようなきんぎょを描いて、かわいらしー絵も沢山残している。福禄寿あたまのたわむれシリーズとか、井上雄彦はここらへん影響受けてそうだなあと思われるユーモアさ。そのユーモアは時代の苦難、政治的な圧力をかいくぐるための重要なツールにもなっている。奇才と呼ばれる人物のタフさ、ひしと感じ入りました。

肉筆画も結構観れました、嬉しい。夏なのできんぎょシリーズもちっとあればよかったな、なんか新しく見付かったものもあるそうですし。複製画販売しててすごくほしかった…い、いつかきっと……!と、今回は絵はがきを買い込みました。かわゆい……。

静岡美術館の展示は12月に東京にやってくるようなのでまた観られるのが楽しみ。