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2011年05月29日(日)
熊谷和徳 TAP LIVE『FREEDOM, MUSIC, and DANCE CARNIVAL』

RHYTHMIST/K.K. 熊谷和徳 TAP LIVE『FREEDOM, MUSIC, and DANCE CARNIVAL』@Shibuya O-EAST

熊谷和徳 Featuring. K.K.QUINTETの初お披露目。そのメンバーと言うのが、池田潔(Ba/Sleep Walker)、菱山正太(Key)、類家心平(Tp)、千住宗臣(Drs)…類家くんと千住くんが熊谷さんと共演て、願ったり叶ったりですがな。

熊谷さんのTAPソロで幕を開けたファーストセット。K.K.QUINTETと2曲、そこにラティール・シーとOLAibiが加わってのビーツセッション1曲、転換してDJ BAKUとのHIP-HOPインプロ1曲。休憩を挟んでセカンドセットはTAPPERS RIOTのメンバーたちと「TOHOKU」、山下洋輔のソロ1曲、山下さんと熊谷さん、ラティールで「My Favorite Things」、山下さんと熊谷さんで「ボレロ」。K.K.QUINTETが戻ってきて1曲、ラストはFreddie Hubbardの「Gibraltar」からK.T.S. SAMBA、アンコールではTAPPERS RIOT、K.T.S. Tappers揃っての文字通りフロアが地響きを起こすTAP。構成も練られた飽きのこない約3時間。いやーよかった、大雨の中行ってよかった……。

圧巻だったのは「My Favorite Things」と「ボレロ」。その前の山下さんのソロもすごくて、このセクションはフロアの空気が一変しました。熊谷さんが「レジェンド、山下洋輔!」と紹介して山下さんを呼び込んだんだけど、もうあっと言う間に持っていきました。アホな感想になってしまいますがホント、オーラがある。出てきただけで、その場にぱっと華が咲いたかのような雰囲気になる。それは、山下さんの活動を知っているひとたちが発する雰囲気を、山下さんのことを知らないひとたちも感じ取って敬意を示したもの、と言うこともあるのだろう。しかし実際演奏が始まれば、彼が「レジェンド」と言われる所以が瞬時に伝わる。雰囲気を読むと言う作業は不要になる。音が景色を見せてくれる、フロアはそれに正直に、素直に反応する。いい光景だった。

「ボレロ」はラヴェルのあれですが、あのリズムを刻む熊谷さんのTAPと山下さんのピアノが殴り合いをしているかのような激しさ。ベジャール以外の振付けで「ボレロ」を観たのも初めてだったので新鮮でした。山下さんのピアノで「ボレロ」を聴けたと言うことも嬉しかったな。

K.K.QUINTETはバリッとジャズで、類家くんのソロも沢山聴けた。熊谷さんがリズムを踏むので千住くんはどう機能するのかなと思っていたのだが、涼しい顔してポリリズムをぶっこんできてました…ひぃー。勿論周りをよく見ている上で変則ビートを噛ませてくるのでアンサンブルとしても非常にスリリング。来週またDCPRGで観られるので楽しみです。

そういえば終盤熊谷さんがバンド側に振り返って両腕を挙げて、それは感情の動きに伴った自然な動作だったようなんだけど、熊谷さんをしっかり見ていた千住さんは何かのキューと思ったのか一瞬えっと言う顔をして自分の背後を振り返ってた。誰もいませんよー(笑)。そして池田さんの方を見て「展開変えるの?このまま行くの?」とアイコンタクトして笑っていたのがおかしかった。その間当然のようにリズムは微塵もブレず。いいわー(笑)。このクインテットは今回限りではないだろうから、これからの展開も気になります。

当日配布されたリーフレットには「ALL FOR TOHOKU 故郷の仲間達へこのショウを捧げる」と書かれていた。熊谷さんは仙台の出身。ご実家も、仙台での教え子も多数被災している。「言いたいことは沢山あったんだけど…いいや、と」。言葉にならない思いは全てTAPに込めている。静かに響くリズム、嵐のように激しいリズム。美しい響きを持ったTAPは祈りそのものでした。

ちなみに震災二週間後の3月25日、PIT INNで行われた『2011 春 梅津和時・プチ大仕事』でのセッション「東北」音源はDIY HEARTSで販売されています。こちらは梅津和時さん(同じく仙台出身)の曲。熊谷さんの「TOHOKU」、梅津さんの「東北」。どちらの音も胸に迫る。
・『梅津和時 × 熊谷和徳「東北」』DIY HEARTS:東日本大震災義援金募集プロジェクト