I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
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2010年09月20日(月) ■ |
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『シダの群れ』 |
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『シダの群れ』@シアターコクーン
岩松了がヤクザもん、しかもコクーンで。しかし岩松さん、こないだはコクーンで大衆演劇のバックステージものをやりましたからね…一筋縄ではいきません、ホント喰えない男よのお(笑)。
で、岩松さん念願の、と言うか満を持してのサダヲさんとの仕事だったそうで、それがまたすごくよかった!岩松さんにしてもサダヲさんにしても、新境地…とはまた違うんだけど、お互いの、おお?と言う面を目にすることが出来ました。これは岩松さんの劇作力なのかサダヲさんの役者力なのか…いや、両方だろうなあ……岩松さんの気障でロマンティストな一面と、サダヲさんのテンションの裏に隠された暗さみたいなもの、静かにしている時の狂気。これを目に出来たことは嬉しい。以下ネタバレあります。
組の後継者争いが、穏やかに描かれていきます。これが岩松さんの書くもんにズッパマリだった。と言うのも、登場人物が皆腹に一物抱えていて、それを隠したまま禅問答みたいな会話を繰り広げるのです。これ岩松さんのテキストの特徴そのものやん…装置にしても「見えないところで何かが起こる」、そして「何が起こったかの説明は極力少ない」。この謎めき効果が光る。そして何も言わず、全てを判った上で死に向かう人物造形が立体化する。そこに絡んで来る女性たちの心理描写もハマるハマる。こんなにヤクザもんと岩松さんの相性がいいとは…!ゾクゾクきました。
だもんだから、岩松作品なのに不思議と腑に落ちやすい…と言うか、後味は悪いんですけど(笑)、翻弄されてイヤな気分になることはない。それむしろ術中にハマッてるんじゃ…あー岩松了だいきらーい!だいすきー!
風間さんとサダヲさんのテンション芝居合戦なんて夢のようなシーンもあってたまりませんでした…これはみものでしたよー。やっぱりキレキレの風間さんは格好いい。その前後がゆる〜い描写なのね、おやつぽりぽり食べてたりやたら皆にコーヒー勧めたり。プツッとキレた時との落差が激しいのなんのって。しかも女々しい。素晴らしい(笑)。サダヲさんはサダヲさんで、あ、ここは絶対キレるな、と思ったところでキレて、しかしその前のくるぞくるぞ、って間がすごくイヤ〜なの。あの銃、弾二発入ってたからあと一発どうするのかな…とか。これがまた意外な使われ方をしてすごくイヤ〜な幕切れに…(これを止められなかった時のサダヲさんの表情がまたよかった)もう岩松さんだいきらーい!だいすきー!
あと持ってる小銭が893円とかしょうもないところに小ネタを入れて、それを敢えて気付かせないように使うところも意地悪でした。だいきらーい!だいすきー!
伊藤さんと風間さんの喪服で「コーヒールンバ」とか、「つぐない」で幕切れとか、カーテンコールが「サイコキラー」で思わず客が手拍子に、とか、もう選曲も拷問のようでございました。笑いを通り越してもう格好いい!こういうギリギリな中で飽く迄影のある人物像を演じる江口さんの役柄も格好よかったよ…このひとコメディも出来るひとだけど、敢えてこの配置ってところがまた絶妙だった。サダヲさんと風間さんがかなり笑いの部分を持っていくのですが、その場にいても格好よさを通さなければならなくて、これがまた見事にブレていなくて素晴らしかったです。サダヲさんと公園くんのやりとりは流石でしたし、伊藤さん、江口さん、黒川さんの緊張感溢れる競演も見応えありました。
カーテンコールで、風間さんがサダヲさんを前に押しやって挨拶させてたのが微笑ましかったです。いい座組。
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