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2010年06月19日(土) ■ |
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『星新一展 ―われわれが過去から受けつぐべきものはペーソスで、未来に目指すべきはユーモア。』 |
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『星新一展 ―われわれが過去から受けつぐべきものはペーソスで、未来に目指すべきはユーモア。』@世田谷文学館
読んでは忘れていくショートショート、ずっと忘れられないショートショート。星さんのショートショートは随分読みました。好きな世田谷文学館での開催、しかもここのサイトによると初の展覧会だそうで。そういえばどんなひとかはあまり知らない。いい機会だと出かけてみました。
4セクション。第一章の『親愛なる家族へのレクイエム』では、父(星製薬創業者)や祖父(人類学・解剖学のパイオニア)との関係等、星一族の歴史をかなり深いところ迄。スペースも随分割いていました。初めて知ることも多く興味津々。作家になる前…御曹司としての、大企業の跡取りとしての星親一。この歴史が、SF作家星新一へ大きく影響しているのだなあとううむと考え込む。しかもかなり資料残ってんのね…星さんのちっちゃい頃描いた絵とか作文とか迄。や、やっぱいいとこの子……。
第二章からはSF作家の星さんについて。カバー画や挿画を手掛けたふたりのよきパートナー、真鍋博さんと和田誠さんの原画も!真鍋さんの『ようこそ地球さん』の原画すっっっっっごい綺麗だった。しかもサイズそんなに大きくないのね…文庫で見たのが初めてだけど、その1.5倍ってとこ?すっっっっっごく細かくて色も綺麗!線画に色指定の版下原稿もあったんだけど、この指定もすっっっっごく綺麗で細かい字で書いてあって、真鍋さんの繊細さが表れてた。ちょっとここ、感動して身震いしましたよ。そして真鍋さんが1970年代(だったかな)に描いた21世紀の絵がまたよかった…星さんのテキストと、想像からこんだけ“今”の絵を描くなんて。あー、真鍋さん2000年に亡くなったんだよね…あとちょっとだったのに。21世紀を目にしてほしかった!和田さんの線画も和田さーん!としか言いようのない線で感動した…いやあ、ここで観られるとは。思えば切っても切れない関係だよねえ。観られて嬉しかったー。星さんネタが出て来る手塚治虫さんのマンガ原稿も展示されていました。異星人の名前がボッコちゃんだったり、台詞に「俺は星新一が好きだ」と出てきたり。
それにしてもビックリしたのは、初公開の膨大な構想メモ。小さな紙片に小さな字でみっっっっっっっっしり。読めねえ!くらい小さい。星型シールを貼った拡大鏡(ナイス)が置かれていて、それでかろうじて読める感じ。「ケシゴム光線」とだけ書かれたなんじゃそりゃ?てなものから、「正ギを売る会社」と言ったハッとするもの迄。そしてその紙片は、サイズも形もバラバラ。浮かんだアイディアを忘れないうちに片っ端から書き留め、その後スクラップして整理していたのかな。かーなーりーの量あったんですが、これでもごく一部だったそう。1001話のショートショートの影にはこれだけのアイディアがあったのですね…もう気が遠くなる。
そして世田谷文学館名物?のお遊びコーナー。ボッコちゃんバーが設置されていました。NHKで映像化された時のボッコちゃんキャラクターと、星さんの等身大書き割り。そして和室ブースでは、ある日の星さんたちの会合が行われたおそば屋の再現。ちゃんとおそばとかどんぶりものの食品サンプル迄置いてあるの(笑)。ここウルトラマン展の時はセブンとメトロン星人が卓袱台囲んで話をするシーンを再現してた(笑)けど、文学館ならではの固定展示ですよねえ。毎回使い道があるのでしょうが、それにしてもいつも面白いの考えるなあ。床面には星さん画の“ホシヅル”(かわいい)がぽつぽついて、踏んづけてしまわないように気を付けて歩く。
近年NHKでも映像化され、再び注目が集まっているようでもあり、ずっと愛され続けてきたようでもあり。物販コーナーにあった『ボッコちゃん』文庫(1971年初版)は95刷。忘れて、また思い出して、また読んで忘れてしまう。それでも星さんのショートショートを読む時のワクワクする気持ち、楽しい気持ちはずっと心の中に残っている。バッドエンドも多かったのに何故だろう?そのヒントは、この展覧会のサブタイトルにもなっていた「われわれが過去から受けつぐべきものはペーソスで、未来に目指すべきはユーモア。」に隠されているのかも。この言葉には勇気づけられたなあ。
そういえば最相葉月さんの『星新一 ―一〇〇一話をつくった人』もやっと文庫になったんだった(単行本の分厚さと内容が重そうなことに二の足を踏んでいた)。上下巻に分かれていれば持ち歩きやすいし、読んでみよう。
世田谷文学館での催しの宣伝美術、最近毎回格好いいんだよなあ。誰がデザインしてるんだろう。次回はサザエさん展だそうです。
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