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2010年06月04日(金)
爆音映画祭『スローターハウス5』

先週の土曜日にとれず、今回代休使って再チャレンジもまたとれなかった爆音映画祭『AKIRA』。きゃ☆代休突っ込む程気合い入れちゃって私ったらオタク☆はずかし〜い☆なんて思ってたくらいで、まさかとれないとは予想してなかった。なんなんだよ…皆平日になにやってんだ(自分のことは棚に上げる)……。おそるべし『AKIRA』ファン。いやーでもそりゃ観たいよね、爆音で『AKIRA』なんてさ!

…追加上映を期待しております……(泣)。

と言う訳で、本日は『AKIRA』とハシゴの予定だったこれ一本だけ観てきました。

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爆音映画祭『スローターハウス5』@吉祥寺バウスシアター シアター1

原作は中学生の時読んでいました。これで“ドレスデン爆撃”を知った。自分の生涯のさまざまな場面を行き来し続けるビリー・ピルグリムのストーリー。カート・ヴォネガット・ジュニアの半自伝的小説です。映画は初見。

めまぐるしく変わる年代、場所。テキストの場合は、章や段落が変わることでこちらの頭も自然と切り替えられるが、映画のそれは無軌道のスイッチバックのよう。しかも猛スピード。つんのめるビートのように異なる時間と場面が目と耳に叩き込まれる。これには振り回された。自分の意志で時間を行き来出来ている訳ではない(んじゃなかったかなー。途中から操れるようになったんだっけ?記憶が曖昧)ビリーの困惑にぐぐっと寄ることが出来た。これは映画ならではだなー。あっと言う間に引き込まれました。

そして映像だと、命があっけなく消え、あっけなく灯る様子がシンプルに伝わる。ダービーは勘違いと言葉が通じなかったことで撃たれる。キャディラックをあれだけ暴走させても無事(無事か?笑)病院迄辿り着いたヴァレンシアは、衝突による怪我ではなく一酸化炭素中毒で死ぬ。ビリーとモンタナの間に生まれたこどもは、いつの間にか産着に包まれ、母親の乳房に吸い付いている。ドレスデンの美しい街並は歴史とともに確かに土地に根付いていて、だからこそ攻撃などされる筈がないと誰もが思っていた。たったの二日間で、それは多くの命とともに失われた。

それが全て目の前で起こる。自分の意志とは関係なく。本のように閉じることは出来ない。この先どうなるか判っていても止めることは出来ない。ダービーにそれを拾ってはダメだと伝えることは出来ないし、展示物であるビリーとモンタナを祝福することも出来ない。ただただ観て、聴くしかない。静かに座っているだけなのに、これだけ心の中がかき乱される体験は滅多にないものでした。この強制力も映画の魅力。

ビリーが時間旅行を出来るようになった遠因(と言っても確定されてはいない)が飛行機事故なんだけど、そのエピソードが中盤に組み込まれていて、謎解きにもなる構成になっていたのが面白かったです。

そして今回の主旨、爆音。タイプライターのキーを打つ音、ドレスデンを死の街に変える爆撃音、グールド演奏によるバッハの「ピアノ協奏曲第5番」が耳に飛び込んで来る。静かな轟音、すみずみ迄響き渡る繊細な微音。素晴らしかったです。爆音映画祭にこの作品をかけてくれたことに感謝!

ぽつん、ぽつんと浮かんではうたかたと消える悲劇と喜劇。全てがユーモラスに描かれる。生命が生まれること自体奇蹟だし、その奇蹟は大概コメディになる。宇宙は神の箱庭で、人間にとってそれは見える所迄しかなくて充分だ。いつでも起こっている、居合わせるのは偶然でしかない。“自由意志を持っている生物”だとしても、選ぶことは出来ない。しかしビリーは出来ると言った。それを多くのひとたちに伝えようとした。ヴォネガットはそう書いた。

ううーん原作読みなおしたくなった。実家においてきた…買いなおそう。と、バウスシアターを出たその足でBOOKSルーエへ。おお流石サンロード商店街の連携力、爆音映画祭フェアをやっており、即原作が見付かりました。

もう会えないひとたちは、違う時間軸の中で生きている。当時出会えたことには感謝しているけど、この小説はこれからの方が支えになりそうだな。手放さないでおこう、傍においておこう。