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2010年02月04日(木)
『カルペンティエル地下文学賞』

菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール『カルペンティエル地下文学賞』@LIQUIDROOM ebisu

何やら知らないうちにタイトルが付いてましたよ。超満杯、パッツパツ。マタギはおらんか〜

と言う訳で、ようやっとフロア対応PTAを観ることが出来ました。菊地さんの過剰なもてなしぶりは毎度のことで、満杯な上に長丁場、終わったの23時過ぎ。DJに菊地さんと日向さやかさん、対バンにworld's end girlfriend & BLACK HOLE CARNIVAL。PTAのゲストにソプラノの林正子さんとタブラの立岩潤三さん。立岩さんが出てきた時あれっ、吉見さん!?でもちょっと小さい…細い…と思っていたら、吉見さんのお弟子さんとのこと。菊地さんのキチガイアレンジをコンピュータでシミュレートするマニピュレータと、それを譜面に起こす作業もやってらっしゃる方だそうです。あれ譜面に起こしたらどうなるんだ。頭おかしくなりそう。菊地さん「いやー、クラシックとかルーツミュージックとか、専門音楽のひとって皆頭おかしいですよね」って言ってたけど、おまえが言うなと(笑)。

20時前にフロアに入ると菊地さんのDJ中。ブリストルぽい重めの音にノイズを交えてどっぷり鳴らしていた。ちょっとしか聴けず残念。続いてworld's end girlfriend & BLACK HOLE CARNIVAL、初見。『空気人形』のサントラでしか知らなかったんだけど、“& BLACK HOLE CARNIVAL”てのがミソなのかな?『空気人形』とはかなり違う雰囲気。ツインドラム、ツインギター、サックス、Macも使う。ステージ上には5人いたけど、エンジニアもいそうだった。クラフトワークの「モデル」をカヴァーしておおっと思っていると、ツインドラムがどっかどかに叩いたりして、なんつうか懐かしい感じも。「80年代のかほりもちょっと…」「アフターディナーとか4Dとか」「しかしあのドラムがボアっぽく」「ROVOとか」「アメ村!西部講堂!」とか話す。

続いて日向さんがラテン系のDJで盛り上げる。転換に時間がかかり、PTAが登場したのは21:30くらいだったか…アッパーセットで来ました。待ってた!「嵐が丘」でスタート。ここでおおっとと思う、音の返りが違う。ここんとこPTAはクラシカルなホールでばかり聴いていたので、響き方がかなり違って聴こえたのです。なんだろ、パン!て手を叩いたら、ホールだと「パンンンンン」くらい残響があるんだけど、リキッドでは「パンン」くらいで。そのせいかどうか、皆さんアタック強めで演奏しているようにも思える。林さん(Pf)とかかなりドカドカ弾いてたよ。しかし慣れてしまえばそれがもうすんごく格好いい!踊りたい!でもフロアぎゅうぎゅうで踊れない!うがー拷問!いちばん踊れるスペースがあったのはステージ上の菊地さんだろうよ。

しかしステージ上もぎゅうぎゅうなのであった。11人編成の上、座奏のひとも多いから椅子が入りますしね。譜面と演奏者が近かったのか、空調のせいなのか、「Killing Time」での吉田さん(1st Vln)のソロ中、楽譜が何度も落ちてしまう。弓も切りまくるくらいのかなり激しいソロだったので、煽られたのかも。楢村さん(2nd Vln)と菊地さんとでその都度楽譜をおさえるも埒があかず、かと言ってソロも止められないしうわーどうする?と思っていたら鳥越さん(B)がクリップを投げ入れた!すかさずそれを菊地さんが拾って楽譜を留めた!と言うナイス連携プレイが。ああすごく格好いいのにすごく笑える!もう爆笑。その後吉田さんは「今日は蝶ネクタイを忘れてきたのでVシネのひとみたいな出で立ちです」と紹介されていた(笑)格好よかったよー!

どっから切ってもビリッビリの緊迫感と一触即発のスリルとスピード感満載のセットだったが、個人的なハイライトはこの「Killing Time」と、林さんと立岩さんが参加した「When I Am Laid In Earth」「行列」。特に「行列」は、よくこんなん演奏するわと思う程複雑なリズムで(しかしこれがめちゃ踊れる曲として成り立っているのが面白いところ)、林さんもよくこのオケで唄えるなあと言う…ご本人もかなり拍とってたし、菊地さんのキュー出しも細かかった。大義見さん(Perc)と立岩さんのかけあいは、DCPRGの「CIRCLE/LINE〜HARD CORE PEACE」を彷彿とさせるタメと爆発。似てるってのとは違うけど…そして菊地さんはいろんなフィールドで活動するひとだから、どれがいいとか優劣をつけるものではないけれど、個人的にはフロアでの菊地さんの音楽がいちばん好きではある。ゲスト紹介の時、菊地さんが「林さんはクラシックの世界で活躍されてる方なので、クラシックのコンサートでは体験出来ないような歓迎をしてやってください!」と言って、それにフロアが「うおー!!!!!」と応えた瞬間は爽快だったし、ああこのフロアの熱が自分は好きなんだ、と思ったりした。野蛮とエレガンが同居するのが菊地さんの魅力だと思うし、どちらが欠けてもいやだけどね。

それにしても数年前迄はアッパーハイライトナンバーだった「ルペ・ベレスの葬儀」がクールダウンナンバーにすら成り得てしまう今のぺぺのダンス狂乱っぷりはかなりのもの。当分目が離せません。アンコールは「時さえ忘れて」でしっとり保湿。リキッドを出た途端の冷たい風も心地よい程でした。

前述の歓声にガッツポーズを返した林さんは相変わらず超男ットコ前であった。惚れる。あれでアリアを唄うんですよ!たまらんよ。アリアでポリリズムでタブラ、菊地さん曰く「西洋クラシックとアラブ音楽、国が国なら殺されるかも知れない」優雅で野蛮な曲に熱狂出来る日本のフロアはなんて危険で幸福なんだろう。