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2010年01月30日(土)
『Dr.パルナサスの鏡』

『Dr.パルナサスの鏡』@TOHOシネマズ有楽座 スクリーン1

ネタバレあります。

うわあんいい話でしかもヘコむ…しかし『ローズ・イン・タイドランド』とはまた違う感じの……あのー『ローズ〜』はタブーと言うか、「見ちゃいかんもんを見た、気が付いちゃいかんことに気が付いた、いや気が付いてたんだけど気が付かないふりをしていたってことを改めて突きつけられた」って感じでこっちの罪悪感もすんごいもんだったんですが…そしてそれを隠さないギリアム監督の業の深さに恐れ入った感じだったんですが、今回はギリアムのロマンティストな面が見られてちょっとホッとした感じも。

ちょっと『イースタン・プロミス』を思い出した。どちらもロシアの臓器売買ネタが出て来るしなー(ロシアのイメージってどうなんだ)。クローネンバーグ監督もだけど、変態とロマンティストは紙一重ですね。愛するひとの幸せを願う時、自分の幸せは望めないみたいな感じですよ…うがーせつない。『ファウスト』がモチーフにあったのかなと思いました。あーでもギリアムって『未来世紀ブラジル』でも『フィッシャー・キング』でも『12モンキーズ』でもこういう面はあったか。そういう意味では一貫しているか。そして女優の面構え選択も一貫性がある!リリー・コールちょうかわいかった。妖精、小悪魔、ファニー、こねこちゃん、ベビードール!声が時々少年みたいなハスキーな感じに響くところもむっちゃ魅力的。ギリアムの作る芝居小屋な世界がもうぴったり。アンドリュー・ガーフィールドも、そういう芝居小屋にいる心の素直な子、と言うのがもう顔に出てる出てる!って印象でとてもかわいい。

そう、ギリアムの世界…実は今回ちょっと油断してて、ヒース・レジャーの遺作となったこと、代役をジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルが引き受けて完成にこぎつけたこと等が「ヒースを愛したひとたちが、彼の遺志を引き継いだ」みたいな美談として宣伝文句になっていたので(実際それは素晴らしいことなのだけど)、ギリアム毒々モンスターの一面を一瞬忘れて観ていた部分があったんです。不覚。それがもう、ジュード・ロウのあのパートで一気に解き放たれた!みたいな感じで…数分、いや数十秒かも?とにかくそんなに長くないシーンなんだけど、ギリアム汁噴出!て感じで思わず「おへえっ」とか声出そうになった(笑)。「警官になろう 暴力大好き!」から「おかあさーん!」ボカーン!のシーンはもうトラウマになった…今夜夢に出そうだ、最高だ。こういうどナンセンスなモチーフをどばどばっとぶち込んでいるのに、どうにもヒューマンな面が見えるから好きなんだろうな。いや、ヒューマンと言うか…ひとでなしなのはひとであるからだみたいな?そもそもひとだからひとでなしなんだよ!みたいな。…『The Man Who Killed Don Quixote』が無事完成しますように。

あ、あと(デイリー)ミラー紙とサン紙についての皮肉にはニヤニヤした。

現実世界のトニーがヒース、鏡の向こう側の三人のトニーがジョニー、ジュード、コリン。それぞれがそれぞれのシーンにぴったり、と言う妙味。脚本改編はなかったとのことですが、ヒースのことがなかったとしても、このキャスティングはしっくり来ていました。終盤の大事なシーンはコリンが担当しているのですが、このひとって暴れん坊な反面慈善事業にも熱心なひとですよね。それが旨味になっていると言うか。

ヒースは…よかったなあ。なんと言えばいいか、でも、よかった。

すごく大事な役でトム・ウェイツが出演していたのでビックリ。知らないで観たのでなんだかトクした気分です。嬉しかった。そして最後のちょっとした音響の仕掛けが洒落ててよかった。トニーの着メロなんだよね。せつなくなった。そうそう音楽も印象的だったんだ、劇中歌のぺらぺらのウィアーザワールドみたいな…これが着メロなんだけど。悪意ある慈善事業のうすら寒さが透けて見えるような曲でむずがゆかったなー(ウィアーザワールドがそうと言うことではないし、善意100%の慈善事業も勿論ありますよ)。