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2009年12月06日(日)
『HEDWIG AND THE ANGRY INCH』楽日

『HEDWIG AND THE ANGRY INCH』@Zepp Tokyo

いや、ちょっとビックリするくらいよかったわ…もう三演なのに。

個人的には理想だった、ライヴスペース+スタンディングでの上演。ヘドヘッドも盛り上がっており、ヘンな言い方だけどホントのライヴみたいだった。芝居と言うことを忘れる瞬間が何度もあった。勿論本来の(って言い方も変だけど)ライヴにも演出や段取りはあるんだけど、今回のヘドはちょっと違った。

それにはふたつの大きな理由があって、初演、再演のFACEよりもホールよりも出音がデカかったと言うのがひとつ。台詞部分との兼ね合いもあり、音響的に難しいところだったのではと思います。FACEの場末感は最高だったんだけど、音の問題(他にもいろいろあったようだけど)で閉鎖されたと言われている旧リキッド=FACEでは音が小さいと感じた。FACEではあまり大きな音を出せないそうなのだ。過去何度も爆音を聴いた場所だけに、それはちょっと残念だった。せっかくここでやるのに!とか思ってて。しかしZeppでは音がデカかったんだよー。アンコール(カーテンコールではない)で山本くんの声がかすれるくらいで。バンドの音に負けじと声を出したんだと思われる。

そう、もうひとつの理由はこれ。山本くんの声が嗄れたのだ。山本くんって本当に巧い役者さんだし、前回ビザのトラブルでタクちゃんが入国出来ず急遽上演形態をひとり芝居にした時も、現場にいた翻訳の北丸さん曰く「ノンシャランとしていた」くらいの天才(しかし白鳥型)。とにかくブレがなくて文句のつけようがない印象がある。巧過ぎて腹が立つと言うような、理不尽な感想を持つくらいのひとだ。その彼が今回ブレた。「Midnight Radio」のヴォーカルが荒れに荒れた。こう言うと語弊があるかな…荒々しい、と言えばいいか。あんなに感情がどっぷり入った山本くんの歌を初めて聴いた。ピッチがズレたとか、下手に唄ったと言うことでは決してなくて、歌に素の感情が入り込んだように感じたのだ。そしてそれは、心を揺さぶられるような歌だった。「Here's to Patti and Tina and Yoko Aretha and Nona and Nico and me」のとこでどばーと泣いてしまったよ。

アドリブも多かったなー、下ネタも増量(笑)。ヘドがいたよ、ありゃヘドが喋ってんだよ。ウルルン口調で喋ったり「きのこ鍋」とか言っててもそりゃヘドなんだよ。こういうのって悪ノリに傾きがちなアドリブだけど、もうヘドが言ってるんだから全然問題ないね!と言うかこれ、今そう思っただけで、その場では山本くんおかしい〜とすら思わなかったよ。あ、あとえらいかわいいと思った。山本ヘドでそんなふうに思ったのは初めてだった。

アンコールはヘドの着ぐるみから山本くんが顔を出したような感じで、ドラクエの話ばっかしててそのギャップが笑えた。おそろしい子……。「Zeppのフロアから登場するのはちょっと怖かった」とも言っていた。そりゃなあ、プロレスラーの入場みたいになっちゃいそうだもんな。抱きつきに行ってたおとこのひとがいたけど(笑)それはそれで面白かった…。

そしてソムン・タクは相変わらずすげいかった。楽日だからと言うことで、この日のラスト(イツァークが女性として出て来るシーン)は自分で選んだ衣裳。赤いミニのドレスにブロンドボブのウィッグで、それこそティナ・ターナーみたいだった。それにしてもこのひと、もともとすごい歌を唄うひとだけど、対峙する相手が強くなるとそれをブースターにしてますます強力になるタイプと見た。あんたら龍虎かと思うようなヘドウィグとイツァークでした。

あーでも「ステージ上の」ヘドとイツァークが強い人物像に見えた分、ステージを降りている時のヘドやトミーの弱さ、孤独、寂しさもより濃く伝わった。

再演を重ねれば重ねる程いいもんが観られるってのは稀なケース。作品がいいからいつ観ても何度観てもいい、と言う“お約束”とは違う質の、予想外の出来だったように感じた。まぐれってことではなくて…勿論この日以外の、椅子が入った状態での上演もいいものだったんだろうけど……でも、この日は特別だったように思う。何故そうなったんだろう。やっぱり“場”が大きかったんじゃないだろうか。興行としてのミュージカル、と言う面から考えると、スタンディングは毎回やれることではないから、今後このようなマジックはなかなか起きないかも知れない。

あー、山本版の初演で離れたヘドファンには観てほしかったな。

パンフが完売になっていて残念だったー。なんか土曜日には売り切れてたらしい。楽日初日だったのでしょんぼり。てか初日もチケットとってたのに行けなかったんだよう(泣)。

そういや銀河劇場とZeppはりんかい線でとなりの駅なので、スズカツさんは移動がしやすかったでしょうな(笑)。