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2009年10月03日(土) ■ |
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『世田谷カフカ』 |
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NYLON 100°C 34th SESSION『世田谷カフカ〜フランツ・カフカ「審判」「城」「失踪者」を草案とする〜』@本多劇場
ちょこちょこネタバレあります、未見の方はご注意を。
おお、流石に見せ切ります。確かにこれ、プロデュース公演でやったらグダグダになると思う…。そういう意味では、客演の横町慶子さんと中村靖日さんの使い方は非常に贅沢です。逆に言えば勿体ないくらい。中村さんってナンセンスやコメディも出来る役者さんですが、それを完全に封じています。それにしても中村さん、結核で命を落とすカフカを想起させるにはいいルックスでした。真っ白(苦笑)。
個人的には、唯一未読の『失踪者』の比重がいちばん高い構成になっていたのであたふたして観た部分がありました。『城』パートは新国立での松本修さん演出版(哲司さんがKだったやつ。思えばこれ、プロデュース公演であり乍ら長期ワークショップで仕上げたものだったな…そう考えるととても大変だっただろうな)を観ていたこともあり、入りやすかった。測量士Kの台詞で〆たところもストンと腑に落ちました。サブタイトルにもある作品以外にもカフカのテキストは散りばめられ、その中にはケラさん筆の『カフカズ・ディック』も含まれ、各所にタイトルと発表年が映し出される親切さもありました。『雑種』って短編が面白そう。探して読んでみようー。
ここ最近のナイロンは、ケラさんの完成度の高い脚本(本人曰く「誤解を恐れずに言えば、新劇的な傾向」)を、スキルの高い役者陣が劇団ならではのコンビネーションの良さで仕上げた作品が続いていました。今回は、稽古場でのエチュードやディスカッションから構成したもので、役者それぞれの個人技への要求と信頼度も更に高い。これ迄は古株の劇団員に目がいきがち(=メインキャスト)なことが多かったが、今回はそれぞれの見せ場が多い分、こちらの視野も拡がった感じがしました。
3人のK―測量士K、ヨーゼフ・K、カール・ロスマンはそれぞれ吉増さん、喜安さん、三宅さんが演じますが、吉増さんと喜安さんが三宅さんと堂々と渡り合っているところにハッとさせられたし、植木さんや水野さん、長田さんも妙に気になる魅力を発揮していた。ここらへんのひとたちって、勿論これ迄にも「な、なんだこの役者?」とひっかかるところがあったし、外部公演なら充分光るひとたちだと思うのですが、何せナイロンは濃くて特徴のある、しかもスキルの高い役者さんが多いので、なかなかじっくり観る機会がなかったのです。今回の公演には、犬山さんや峯村さん、みのすけさん、松永さん、大倉くんたちが出ていません。にも関わらず魅力ある舞台だったことは劇団員の層の厚さを示し、なおかつナイロンと言う劇団色の濃さをより強く感じさせる作品になっていたように思います。
こういうところを見ると、ケラさんてなんだかんだで面倒見がいいと言うか、劇団全体のことを考えているなあと言う感じはする。その分厳しいとは思いますが。
それにしてもナイロンの女優さんはいい声のひとが多いな。野田さんの起用する女優さんの声のよさとは違うものだけど、演出家の好みが反映されているなあと思った。
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