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2008年02月22日(金)
『ファントム』楽日+『ロボットとケダモノとニンゲン』

『ファントム』@青山劇場

千秋楽です。シャンドンはパク・トンハ。ルカスとはまた違った骨太で野性的とも言えるシャンドンでした。男前!ルカスとは声質も違うのに、第一声の「ボンジュール、マドモアゼル!」がもうすんごいルカスとそっくりでビビる。発音が綺麗だってことかな。日本語も流暢でした。

開演前劇場内をアンサンブルの皆さんがうろうろしているのですが、ロビーではメトローマンスホテルのアランがアコーディオンを弾いて、お客さんたちと記念撮影をしています。アコーディオンの上にはカップがくっついてる。お代を入れるといいみたいよ(笑)役者さんがチップ入れてましたが、お客さんで実際にお金入れたひといるかな?

そして今回席の近くにいらしたアンサンブルさんがずーと動かないので何してんのかなと思ったら、席に座っているお客さんの似顔絵を描いていた。大概おっちゃんをチョイスしている、何故だ。で、おっちゃんは気付いてないんだな〜つれとずっと喋ってて。描かれてるよ!ガン見されてるよ!

で、以後すんごい気になったので今日はこのひとばっか観てしまった…。オペラ的な高音が見事な荒木里佳さんと言う方でした。彼女はビストロのシーンでクリスが主役を獲得した時ヤケッパチになってワインを手酌でがぼがぼ呑んでいた(笑)

アンサンブルの皆さんがソロやデュオで唄うパートを堪能出来たのも楽しかった。阿部よしつぐさんは所作も綺麗。まことさんの声もよく聴こえる席で嬉しかったな。すっかり「Phantom Fugue」が気に入ってしまったんだけど、このシーン歌だけでなく画ヅラもいいんだよー。振付けがすごく格好いい。あーもーすげーここ好きー!

千秋楽と言うこともあり観客のレスポンスもよく、カーテンコールはすごい盛り上がり。大沢さんに黄色い声も沢山飛んでいました。2度目のオーケストラメンバーも出てくるカーテンコールでは、舞台後方からスズカツさんも出て来て驚いたがな!ちょ、今回は最初から出る気満々か!これ迄は役者に呼ばれて客席から走って出て来てたのに!その後キャノン砲で銀テープが打ち上げられ「Melody De Pari」を全員で唄ったので、ここもちゃんと演出に入れていたんだろうな。観客の手拍子が頭打ちになっていたのはご愛嬌です(笑トホホ)

マリス師は以前から「ビリー・コーガンは宝塚がきっと好きな筈」と言ってるんですが、今回も「ビリーは『ファントム』を観るといい!」と熱弁しておりました。「『私は美しいものが好き』って台詞もあるしな!」「アイムアグリーとか言うひとだしな!」「きっとエリックに共感して涙する!」いやホントそう思いました。ビリー観ておくれよ。

いやーそれにしてもスズカツさんと言えば隣の青山円形劇場がホームってくらい常連なので、今回青山劇場の方に入場するのは不思議な感覚でもありました。デカい空間、スタッフの細分化をとりまとめる仕事っぷりが観れたのは非常に面白かったです。多分、役者もスタッフも今迄でいちばん多かったよね?いつか円形と青山両方で同時に公演とかあれば面白いな。

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ぎゃーカーテンコール沢山で劇場出たの17時!時間がねー!移動とヤボ用でアップル銀座に着いたのギリギリ。走って汗だくです、今日はあったかかったしな!おひるごはんも食べてねーおなか鳴ったらどうしようー。

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知デリ『ロボットとケダモノとニンゲン ―ホントに区別がわからない。』@アップルストア銀座 3Fシアター

いんや面白かったー!走って行った甲斐があったね!あっと言う間の2時間でした。大阪大学コミュニケーションデザインセンター(CSCD)のアート&テクノロジー知術研究プロジェクトです。知識をデリバリーするから知デリ。デリカフェみたいに楽しめるように、とのこと。

このCSCDの教授が平田オリザさんなんですね。彼がホストで、今回のゲストは飴屋法水さんと大阪大学大学院教授/知能ロボット学者の石黒浩さん。平田さんは阪大で石黒さんと「ロボットに演劇をさせる」プロジェクトをやっているようです。飴屋さんは昨年平田さんの『転校生』を演出したので、その縁で。石黒さんと飴屋さんは多分初対面で、パイプ役を平田さんが務めると言う感じでした。

飴屋さんが遅刻(笑)「まさかホントにビョーク行っちゃった!?(後述参照)」とハラハラしましたが、ちゃんといらっしゃいました。

あああ、面白かったんだけどどこをどう書けばいいのか判らない。どこか全部テキスト起こして載せてくれないかなー!印象に残ったところをおぼえがき。話した順番はバラバラです。記憶で書いているので発言そのままではありません。明らかな間違い等あればご指摘ください。

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・ロボットを人間に似せて作ると『不気味の谷』に落ちると言う話。機械機械してるとあーロボットだなーと認識出来て不気味にも思わないんだけど、体格、表情、肌質…と人間に近付けて作って行くと、ある時点で不気味に見えてくる。「動く死体」のように見える(石黒さん)

・人間は皆でごはんを食べて、ひとりで生殖する。他の動物はひとりでごはんを食べて、皆で生殖する。生き残るためには動物の方が正しい。人間って…(石黒さん)

・「ロボットに演劇をさせる」のは、ロボットだけで、ではなく生身の人間と共演させると言うこと。台詞を絶対間違えない、体調も崩さない、常に同じクオリティで舞台に立てるロボットを前にした時、生身の役者のアイデンティティーがどうなるかを研究してみたい(平田さん)

・そもそも演出家って仕事も因果なもので…わざわざ人間を使うって言う(平田さん)

・自分のロボットを奈良の大学に置いておいて、自分は大阪からそれを遠隔操作してディスカッションしたりするんだけど、生徒は自然に接してくる。でも給料は2人分貰えないんですよね(笑)(石黒さん)
・以前ウチの劇団の看板役者だった嶋田久作さんが出演するよ、と告知をして、実際の公演にはモニタに嶋田さんの顔を映したロボットを出演させた。声は嶋田さん本人が母音と子音を別個に発音したものをサンプリングしておいて、それを組み合わせて喋らせた。これをお客さんが観に来て「嶋田さんが出演している」と納得してもらえたかと言うと、そうでもなかった。この違いって…(飴屋さん)
・例えばキムタクが来るよって言って来てみればキムタクそっくりのロボットだった。声も顔も完全に再現しているとして、それをキムタクだとお客は納得するか?お金をとれるか?(平田さん)
・でも実際にそのロボットと話したり握手したりすると、彼のファンはドキドキしたり、いろんな感情が喚起されるでしょうね(飴屋さん)
・ロボットを使ってアリバイ工作や詐欺まがいのことが出来るようになった場合の対策は?(参加者からの質問)
・実は今日ビョークってひとのコンサートのチケットを僕買ってまして…僕のロボットがあればどっちかがコンサート行ってどっちかがここに…とかちょっと考えました(場内大ウケ)(飴屋さん)
・給料はほしいけど犯罪はダメですよね(笑)ここ3年くらいでもうそれはかなり現実的なものとして研究が進んでいる。法律家も招いてどう対応していくかを考える段階に入っている(石黒さん)

・この3人の共通項は同世代、と言うくらいしかないんだけど(飴屋さん'61年、平田さん'62年、石黒さん'63年生まれ)これってオタクの第一世代。個人差はあれども、戦争もなく生活上何の不安もない環境で育てられた最初の世代。特に'62年生まれは犯罪者の当たり年(とこの年生まれの犯罪者の名前を列挙。あまりにも有名な犯罪者の名前があまりにも続くので客席からはどよめきが)。何のモラルもなく育った世代なのかもしれない(平田さん)

・娘が生まれた時はアンドロイドと競争だーなんて思いながら研究をしていたけど、もう全然追いつかない。諦めた(笑)人間の仕組み自体はとても簡単。大体そんな難しい仕組みだったらとっくに滅亡してる。でもどうやってもまだ人間そのものを人工物で再現することは出来ない。その複雑さ、不思議さが気になる(石黒さん)

・ロジックとして考えれば、例えば食べ物って成分だけを摂取出来れば人間は生きて行ける。だからメニューの成分表を見て、その成分だけを食べるってのを作品にしたことがあったんですけど(『Dutch Life Vol.2 JUNKY FOOD』調理品の栄養素を化学物質カプセルのみで提供したもの)どうしてもそのものを食べたくなる自分がいる。こんなに科学が進んでいるのに、どうして今も人間は生き物を殺して食べなければ生きて行けないんだろう?
そうやって人間って何かなと考えて、それをロジカルに表現出来ないかと思って続けているんだけど、やっぱり人間は理屈では説明出来ない。最近ではギブアップ感がある…(飴屋さん)
・でも味の素っておいしいですよね(笑)なるべく食べるようにしてる。かにかまとかにの違いなんてそんなわからんような気もしますけどね(笑)
確かに諦めってのはあって…(飴屋さんが質問した)ロボットを奴隷として考えるってのも、平等だとか言ってるくせに人間同士にも支配したいって考えがあって。学会でこの話をすると欧州の研究者からはやっぱり奴隷として扱いたいと言う意見が出てくる。それはすごく残念だと思ってる。でも、そう思っている自分自身も、ロボットはスイッチ切れば動かなくなると言う割り切りのもとに作っていて、そこには支配の感覚もある。そんな矛盾の中で研究を続けている(石黒さん)

・ロボットを展示すると必ず何人か自分を止められなくなってロボットを襲おうとするひとが出てくる。あーやばいなーって学生が取り押さえたりするんだけど、これも「自分が支配出来るものがあった!」って感じなんだろうと思う。こういうひとが増えていくのかも…前からそういうひとはいて、単に目に付きやすくなったのかも知れないけど。増えていくとしたら、そういう世の中って…(石黒さん)
・いや、きっと増えないでしょう(飴屋さん)

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このひとことは飴屋さんらしいタフさ、前向きさだなと思った。

飴屋さんと石黒さんの根っこは非常に似ている、と言う結論が出て、それをお互い確認しておひらきとなりました。石黒さんは関西弁でオモロくて、どの話も興味深く聞けました。著作も読んでみようかな。

他にも人間と人間以外の動物の生殖について、とか言語を扱うことについて、とかもーすんごい面白かったー!あー面白かった!