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2007年09月15日(土)
『ロマンス』

こまつ座&シス・カンパニー『ロマンス』@世田谷パブリックシアター

初日が遅れなかったのに驚いた。これはプロデューサーの力ですか?(毒)

それはともかく、すごくよい舞台だった。うまいうまいうま過ぎる。そつがなさ過ぎる。笑いに対する真摯な思いと、命懸けで笑いを創るひとたちの姿と、それが受け入れられない環境への皮肉とどうしてだ!と言う叫びと諦めとそれでも諦めてはいけないと言う思いと。喜劇作家が描く、喜劇を書きたかったチェーホフの物語。

『かもめ』『三人姉妹』『桜の園』は何度もいろんな演出で観ているが、喜劇だとは思ったことがない。しかし人生ってこんなに情けなくて滑稽なものなんだ、と言うことは毎回ひしひしと感じる。スタニスラフスキーとチェーホフの確執は有名なものだし、今回のストーリーには出てこなかったが、テネシー・ウィリアムズとチェーホフはお互いをとても意識していた。現役のうちに認められ、作家としての地位も得、嫉妬も羨望も数多く向けられているチェーホフは、どうしても自分の作品が理解されていると思うことが出来なかった。

その「理解者」はオリガかマリヤか。と言う視点からのエピソードもとてもうまいうまいうま過ぎる展開とうまいうまいうま過ぎる女優ふたりの素晴らしい仕事っぷりが、愛情と憎しみの奥にあるせつなさを引っぱり出していて気持ちがけばだたずに観られた。本当はもっとどろんどろんだと思うんだ、こういうのは。それを敢えてどろんどろんに描かず、真正面から口論させる、チェーホフとオリガがお互いのいいとこ探しをして笑い合う場面をマリヤに見せて、マリヤの深い敗北感と絶望感を見せる。しかしチェーホフが死んでしまえば笑顔しか残らない、いい思い出が笑顔を呼ぶ、時は過ぎて憎しみも薄れる、そしてマリヤは自分がやるべきことを判っている、と言う終幕に持っていったところにも好感を持った。

それは劇中にもあった(記憶で書いてるので微妙なニュアンスが違ったらお許しを)「人間は笑いを持って生まれては来ないから、自分で作り出さねばならない」と言う台詞から、どろんどろん(これはオリガとマリヤ、スタニスラフスキーとの確執に限らず、自分と向き合うことに関しても)に気付いていない訳がないけど敢えて笑顔を選び、喜劇を書く覚悟を持った作家を、『ロマンス』の作家が描こうとしていたからだ。やはりすごい喜劇作家。

出演者はこの6人でなければどうなっていたことか、と思う程の素晴らしさ。全員出ずっぱり。演じる役柄も多い。その切り替えの早さ、的確さ、軽妙さ。あと全員空気の読みとその対応も早い。もう、中途半端な気持ちで舞台に立ってるひとはこれを観て打ちのめされるがいいよと思った(だれのことだ、それは・笑)

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■よだん
久々に生瀬さんを舞台で観たけどやっぱり映えますなあ。最近サラリーマンNEOでばっか観てたからはっとしたー

■フィーゴたんが帰ってきたよー
初期化もされず!よかったよかった