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2006年12月07日(木)
『トーチソングトリロジー』楽日

■ジェイミ終了後
ほうほうのていで帰宅して、おふろでガーと寝て(結局また寝ている)何となくシアテレつけたら『はたらくおとこ』やってて、それ観乍らうとうとしてたらすんげーうなされた。長塚くんのバカー!(言い掛かり)

■ところで
この「ほうほう」って何。と調べたら「這う這うの体」って書くんだね!成程ー!(学習)

■で、
翌日観た『トーチソングトリロジー』で、ラジオのDJの声が妙にエロい美声だったのであれーと思ったら、池田ナルシーでした。いやあ、ステキな声ですわねえ

■ところで
来年の阿佐スパの新作、「あの男たちが再集結!」とかって書かれてましたが、どの男たちですか。勝手に4〜5人予想してますが、当たってますか(と言いつつ書かない)

■まー
しばらくはこの体調が続くんで、慣れるしかないな

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『トーチソングトリロジー』@PARCO劇場

いつの間にやら楽日ですわよ。結局楽日しか観れませんでしたわよ(泣)

はーそれにしても保湿液のような作品でした。じわーっとね。心にうるおいがねー。まあうるおいだけでは済みませんが。でも人生こんなもの。困難はいつでも付きまとう、しかしそれにはちょっとした滑稽さも付いてくる。愛している、でもまだ充分じゃない。充分になったら?死んじゃうんじゃないかな。

映画化もされており、名作中の名作として知られているものですが、それを“ニュー・スタンダード”シリーズとして上演する意義みたいなことをちらっと考えました。名作なのは周知。何故名作なのか?普遍性があるからだ。

初演された80年代はゲイがやっと自分のことを語り出した、語れるようになってきた時代だった。その後AIDSの存在が大きく影を落とし、また新しい壁が出来る。環境はどんどん変わる。それでもこの作品が現在に伝えるものは沢山あり、だからこそ多くの観客に愛されるのだと思う。

50、50、70分の3幕。膨大な台詞量。しかし体感時間は短かった。会話の中に自分を見付け出すことが出来るからだ。セクシュアリティのことだけではなく、愛しているひとのことを思う、求める気持ちには共通するものがある。

しかしこの会話に乗り切れなければかなりツラいんじゃないかな。台詞を操る役者の力量をかなり頼りにするものだと思います。その点では、篠井さんと木内さんがズバ抜けていました。アランとローレルがちょっと見えづらかった。かわいらしくN.Y.のゲイたちに愛されたアラン、しかしそれには売春も含まれる。自分を家族として迎え入れようとしたアーノルドに対し、アランはどんな思いを持っていたのか。そして愛するひとが何故かゲイとバイばかりになってしまうローレル。彼女がアーノルドと会うことにした思いの裏にあるものは?そこらへんをもう少し明瞭にしたかった。

その後アランはホモフォビアの若者たちに無惨に殺される。舞台上ではそれは描かれず、第3幕でアランの不在を不思議に思う観客に、さりげなく会話上で伝えられる。アーノルドは母親に、アランがどんなふうに死んだのかを伝えていない。信仰や慣習、そしてそれを信じる自分にしっかりとした意志、自信がある母親とアーノルドはなかなか解り合えない。しかしふたりの間には親子の愛情と言うものが確固としてある。言い争いは、互いが「自分の人生から出て行ってもら」いたくない故だ。口論は熾烈を極める。互いを拒絶せず、とことんやりあうからだ。

終盤、アランがどうやって死んだかを知った母親がある言葉を口にする。ここで、ほんの少し前進が見られる。

ふと『イヌの日』の台詞を思い出した。「だって、お母さんだよ!」。現代は、この言葉すら不確かだ。それでもそんな愛情を信じている、信じたいと思い続ける気持ちがこの作品の普遍性に思える。

そして字面にするとヘヴィーなこのストーリーは、舞台上では陽気だ。アーノルドの闘いを笑顔で観ることが出来る。その笑顔は、何もかもを乗り越える意志を持った笑顔だ。圧巻だったのはバックルームでのセックスシーン。照明、音響だけであの場を見せ切る演出は見事だったし、実に情けない、不様だけれど何故か笑える、顔も見えない相手とセックスしながらも陽気に振る舞う、そしてバックルームを出た後に、姿勢を正してゲイバーを後にする、たったひとりきりのアーノルドを演じた篠井さんは素晴しかった。これが今、日本の劇場に存在するアーノルドなんだ。

さとしさんもあの情けなさがハマッていたし(いやー憎めないねこのキャラは!パートナーはたまらんだろうがな…)、壮絶な幼少期を過ごしているのに、ドライでい乍ら不思議と諦観が感じられなかった(そうなる迄には本当にいろいろあった筈なんだ、彼は)デイヴィッド役の黒田くんも素晴しかったです。

スズカツさんの演出はますますシンプルになっていますね…。それが今回かなり効いていたと思います。見えないシーンでこちらが何を想像するかも大事。デイヴィッドのリクエスト曲がラジオから流れた時、ダイニングにいるアーノルドの姿は見えない。母親はそっと部屋を後にする。戻って来たアーノルドは煎れたお茶を持ち、笑顔で部屋に入ってくる。

ダイニングでアーノルドはどんな顔をしていたのか。それは具体的には見えないが、誰の心にも同じような表情が浮かんだのではないだろうか。

第3幕は6月で幕を閉じますが、12月に観れてよかったな。年末にいいものを観た。エミちゃんのピアノと歌もよかったです。ミュージックファイルがCDとして販売されていたので買っちゃった。

アーノルドの衣裳かわいかったなー。白いルームシューズに長い耳がついてるの。うさぎだー。パジャマもかわいい。部屋に置いてあるものも、シンプル、上品で、ちょっぴりガーリィ。

そうそう、楽日だったのでカーテンコールも微笑ましいものだったのですが、篠井さん謙虚過ぎ(笑)主役なのに!

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■チラシいろいろ
『写楽考』本チラ、『欲望という名の電車』速報ゲット

■『写楽考』
チラシの裏に、上演台本作成に関してスズカツさんがことわり書きをしています。うんうんこういうのは言っといた方がいいと思う