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2006年11月26日(日)
『イヌの日』楽日

阿佐ヶ谷スパイダース『イヌの日』@本多劇場

友人と一緒に観たので気が緩んだのか安心感があったのか二度目だからか、結構泣いてしまいました。しかしこれがですねえ、感動してと言うより悔しくてとか苦しくて泣くもんだからもう拷問です。おえーこんな涙流したくないと思い乍ら泣くのって嫌なもんです。だからこそ最後の正行の態度を、まだ望みがあると思いたいのかも知れない。実際は判らない。

まず孝之の「海行きたいね、山行きたいね、死にたいね、柴死にたくない?」のとこ。「こんなとこ出たい」って言われるよりツラい。海とか山に行きたいのと同列に死にたいんだよこのコは…。孝之って監禁されたのが中2の時で、他のコたちよりも年長さんなんだよね。心も身体もちょっとだけ大人。それだけに自分がしっかりしなきゃ、自分が皆を守らなきゃって意識がとても強いように感じた。「ちょっとだけ大人」だけにいろいろ気付いているようにも思えた。上の世界が「思ったよりは地獄じゃない」と言うことも。

どう言えばいいか難しいけど、身体、のことも結構デカいと思う。中2だから知識もあるだろう。菊沢のことを考えると尚更。孝之はいろんなことに気付いていたんだろう。そして自分の身体についてもいろいろ思うところがあっただろう。それでも彼は多分…そう、多分だ。多分だから書かないでおく。

あの写真を撮られるところも、一度目は洋介を守るようにしていたところにだけ目が行ってしまったけど、今回は全員を守ろうと皆を抱き寄せ、必死に立っているように見えた。それに気付いたらもうね…歯を食いしばって観てたもんだから終わった頃には顎が痛くなってましたよ…。

で、一種カタルシスがあるようなこの光景にいる中山さんと言うのがとても捻れている。感情の出し方が独特なんですよね。だからこそ、より深く心に刻まれる。人間の感情は複雑で、悲しかったら泣き叫ぶとか、楽しかったら大声で笑う、と言うストレートな表現でなくても、ぐっさりひとを刺すものがある。やーもう中山さん絶賛です。もうにゃきゃやまさんとは言わないわ!嘘です、言います(笑)カーテンコールでもお兄さんっぷりを発揮してました。松浦さんを気遣ったり、長塚くんに何か挨拶しろと促したり(長塚くん照れちゃってか辞退してたけど)。

しかし伊達くんもすごい捻れっぷりだったな…ああ言うふうにしか愛情表現が出来ない。菊沢に「中津とだったらもっと」と言われても、ああいう返し方しか出来ない。それはいつも取り返しがつかない。許すとか許さないとかそういうことですらない。出来ない、表現の仕方を知らない。

こんなふたりの役者がいる、そしてこんなふたりの役者を舞台にどういさせるか考える劇作家・演出家がいる阿佐スパ。改めておっそろしいユニットだと思いました。

リピートだったのでop.映像のアニメーションではっとするところがあったりした。教室でひとりの女のコ。それを見ている男のコ。

終演後、長塚くんの女性の描き方について熱く語る(笑)一致したのが、陽子が麻雀牌拾ってるところが嫌だった!てところ。しかしここも複雑で、そういうことをされて気にしていないように見える陽子を見下した描写ではないんだろうなと…自覚を促していると言うか、気付けよ、と提示しているように思えた。終盤の女のコふたりに関してもそう。

あと初演のパンフを見せてもらったんだけど、五味は初演では九頭って名字なのな。ははは、粋なことをしますね。粋か?前回観た時に書いたけど、この五味ですら「お前のやることは信じられない、理解出来ない」と言うことがなかった。むしろ理解出来ない方が楽だ。でも長塚くんはそれを許さない、徹底的に、丁寧に、理解出来るように書く。腹が立つな。でもそれをこれからももっと観たいと思っている。