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2006年07月21日(金)
『ローズ・イン・タイドランド』

『ローズ・イン・タイドランド』@新宿武蔵野館2

ギリアム好きふたりで観に行きました…エンドロールの最後迄観て、無言で映画館を出て、エレベーターに乗って、外に出て同時に叫んだ(ホント)ひとこと。

「くるってるよ!」
「キチガイだよ!」

まあそんな映画です。でも…好きなんだよねえ。以下ネタバレしてます。

広告のコピーは「パパもママもいないけど、この世界で生きていく!」、モチーフは『不思議の国のアリス』、かわいらしいイラストをあしらったポスター、そして主演のジェライザ=ローズを演じるジョデル・フェルランドのキュートなことと言ったら!不幸だけれど強く生きていく女の子が入り込む、ちょっと奇妙なファンタジーを思い浮かべて映画館に入るひとも多いと思います。

……が、がですね。まあ…実際そうなんですけど……その方向がとことんヘヴィーでして……。

ヤク中のパパとママと暮らしているジェライザ。パパは娘のことが大好き。ママも娘のことを(ママなりに)かわいがっている。ジェライザはパパのためにヘロインを調合している。ママには脚のマッサージ。これがカラッとした日常。日常だから悲惨に見えない。ジェライザにとってはヘロイン入りの注射器をパパに渡すのも“お手伝い”です。で、そのうちママがメタドンのオーヴァードーズで死んじゃいます。パパは「ヘロインにしとけばよかったのに!」と嘆くけど、執着しません。すぐにシーツにくるんでお葬式。部屋にはいくつものミラーボール。こういう葬り方もいいね。

……ほらほら、マヒしてきたぞー。

余談ですが、ママの髪の色といい髪型といい服の趣味といい、コートニー・ラヴに激似でして…ワザとか、ワザとなのか!ヤク中のかあちゃんつったらコートニー、って図式が出来上がってるってことですかね…。

で、家を出たパパとジェライザはパパの故郷へ向かいます。たどり着いた家でパパは“バケーション”に出るので注射するぞーとジェライザにヘロインを頼みます。で、ぶっちゃけ死んじゃいます。ジェライザはパパを殺したことになります。いつ迄たっても“バケーション”から帰ってこないパパは臭くなってきます。ぶっちゃけ腐ってきています。でも、ジェライザはパパのおならが臭いことを知っているので、「またパパがおならを!」と言いつつ、彼を着飾ってあげたりします。

ここが判断に迷うところで。パパが死んだことに本当に気付いていないのか、気付かない振りをしているのか。ジェライザはどんなに外で遊んでも、パパの死体があるこの家に戻ってくる。物理的に他に行くところがないからと言うのもあるけど。どんなに妄想を膨らませても、パパは生き返らずに腐っていくばかり。

このままこの家でひとりで暮らしていくのかな?でも、それはきっと無理。想像力ではお腹はいっぱいにならない。

ご近所さんの幽霊女は、死んだ者は復活するので埋めてはいけない、剥製にしておかなければならないと言う強迫観念に囚われています。で、パパのことも剥製にしちゃいます。結果的にはこれが、ジェライザが家を離れるきっかけになったのかもな。そういう意味では命の恩人。ジェライザはそれに感謝はしないけど。

こどもはタフだ。パパもママも置いて行く。知能が10歳のともだちとのキスでこどもができる。でもそのともだちはサメ退治で死んじゃったかもしれない。幽霊女にはもう会いたくない。じゃあこのサメに乗ってたやさしそうな女のひとについてっちゃおうかな。

そうやっておおきくなる。さあ、どの時点で想像することを止める?そしてそれが、大人になることなのかな?

じゃあ、こんな映画を撮っているギリアムは……こどもの心を持ち続けている大人、と言えば聞こえはいいが、やっぱりキチガイだ。性的描写もやべーよー、と思う台詞やシーンが多くておいおいって感じです。監督本人の嗜好は知りませんが、こういうのを撮れるってのはやっぱりすごいな。R-15だからジョデルちゃんは出来上がった作品をまだ観られないんだよね。台詞の意味をどこ迄理解して話していたんだろう。でも、彼女のあの表情、あの口調は、全てを“知っている”かのようだった。恐ろしい役者さんです。

あっ、あと!徹底的に第三者の目線で撮っているのに敬服です。主人公主観を根こそぎ排除している。それがストーリーの流れを行方不明にさせる。全く展開が見えない。観客が遭難する可能性すらあるのですが、まあ、それも監督の狙いなんでしょう。体感時間は長いです。ラスト3分くらい迄どう終わるか読めませんでした、お見事。

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ごはん食べつつ「おかしいよ、おかしいよギリアム!」と盛り上がり、その流れで『未来世紀ブラジル』→『フィッシャー・キング』→過失でも死んだもんは死んだもんだしねえ→復讐は是か非か?→『怨み屋本舗』→貫井徳郎『殺人症候群』→ドナー提供のディープな話になった。何でだ。真蛸のどなべごはんおいしかった…。