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2006年03月18日(土)
『super audio lounge 4』

『super audio lounge 4』@ソミドホール

多彩なSACDタイトルを、高音質・大迫力で聴けるリスニングセッション&豪華ゲスト陣によるトークイヴェント。DEPECHE MODE『PLAYING THE ANGEL』、NINE INCH NAILS『THE DOWNWARD SPIRAL』の回に行ってきました。BJORK『MEDULLA』も数曲。司会進行は鈴木喜之さん。

20分前に会場に入るともう結構なひとが。休憩時間に隣接のソミドバーでドリンクを買っていたら、スタッフらしきひとが「今日の参加者は若いですねえ!」「前の2列は10代も多いんじゃないか?」と話していました。他の日はクラシックやジャズのプログラム。客層がかなり違ったようです。会場に置かれていたSACDのカタログは、圧倒的にクラシックのタイトルが多い。頁数がロック&ポップスの6倍くらいありました。

現時点のSACDは臨場感+音の良さを求めるのが主流と言うことかな。極端な話、生音をいかに忠実に再現するか、に主眼が置かれているよう。電気ものの音響配置やプログラムへの追求は発展途上と言うことだろうか。しかしその分未開の領域が多いと言うことで、それを使いこなせるサウンドデザイナーがいればいくらでも面白い展開になるのではと思いました。

あとやっぱりSACDを再生する環境を揃えるのがね…ロックやポップスを聴く若者はほら、経済的に(苦笑)あと東京ならではの住宅事情もある。フツーの家(防音施設なし)で爆音で聴くと近所迷惑ですしー。ソニーとしては商品の紹介とともに「買ってね!」と言う宣伝もあると思うので、おめーら買ってくれるのかようってのもあるかも知れませんが、それはほら、未来に投資すると思って!今回試聴出来た若者が、音の素晴らしさに感動して将来ドカンと買い物をするよ!(笑)

とは言うものの、今では随分リーズナブルな商品も出ているそうですぜ(フォロー)

そういう意味で、とても有意義なイヴェントだと思います。音の凄さを納得させられる『PLAYING THE ANGEL』『THE DOWNWARD SPIRAL』『MEDULLA』と言うソフト選択も良かったです。

と前置きが長くなりましたが、そのソフト陣。従来の2chで聴いても勿論素晴らしい3枚の作品ですが、それを5.1chサラウンドヴァージョンにミックスしたものです。鈴木さんが仰っていたポイントをいくつか。

・曲作りの段階から関わっているメンバー自らミックスを手掛けた方が出来がいい
・それは、曲がどういう風に鳴るかを把握出来ているから
・単に5.1chにするぞーってだけだったら、こけおどし&アトラクション的なものになってしまう
・この曲ではどの音をどの配置にすれば最適、と判っているのは、やはり曲を作っている本人
・『THE DOWNWARD SPIRAL』は、5.1chにミックスするにあたって、新しい音は一切加えていない
・元々トレントの頭の中ではこう鳴っていたんだろう
・発表時(1994年)はまだ2chしかなかったから、2chに最良な状態でミックスしたんだろう

1994年て…12年も前ですよ。こどもが生まれたら小学校卒業するよ!干支もひとまわりするよ!10年ひと昔よりも前だよ!その時点でこんな……ひょえーてなもんで。リリース時にリアルタイムで聴いていたけど、その時点で相当ブッとばされましたけど、今回5.1chで聴いたら初めて聴こえた音の多いこと!うっそここにこんな音が!てのがいくつあったことか。

音の配置も…メインヴォーカルは基本的に真ん中に置いてあるけど、コーラスやユニゾンで重ねている声がとんでもない位置からガッと入ってきたりして…しかもその音が移動する。スピーカーから出る音だけでなく、その音が室内に反響することも考慮しているのではと思える程で…だってスピーカーがない、天井から音が降ってくるように感じられたところもあったもん。音圧もかなりあった。

全曲すごかったんですが、個人的には「PIGGY」のキック、「CLOSER」のヴォーカルとアウトロにヤラれました。「A WARM PLACE」〜「ERASER」の流れもすごかったな。やーもう〜聴けてよかった…。

「自分はトレントの頭の中で鳴っている音の、どれだけを聴き取れているんだろう?何十分の一?いや何百分の一?」とよく思うし、聴き取れてないよごめんよ!と思うこともあります。でも、テクノロジーに助けてもらって、ちょっとでもトレントの頭の中の音に近付けるってのは嬉しいもんですね…まあそれを実際形に出来るトレントがすごいんですが。いやホント、これは一度は体験した方がいいよ!

しかし鈴木さんは以前「トレントは12chを与えられたら、12chにふさわしい音もガッチリ作れるでしょう」とも言っていたな。て、てんさい…天才と言わずしてどうするよ。恐ろしいことですよ。まだ上があるのかい。

ああっNINのことばかり書いてしまったぞ。『PLAYING THE ANGEL』もよかった!ガツンと入る最大出力の低音にアンプが耐えきれなくなり、2度音が止まると言うアクシデントがありましたが、それだけ音の領域と移動幅の広い音作りをしていると言う証明にもなってました。「PRECIOUS」「I WANT IT ALL」「DAMEGED PEOPLE」がよかったなー。デイヴって倍音が出る声なので、インスト部分の音の広さにすんなり馴染むし、存在感も抜群。『MEDULLA』も、ビョークの声の存在感を改めて思い知る作りでした。あーこれフルで聴いてみたいな。

と言う訳で楽しいイヴェントでした。これだけ集中して音楽を聴く機会もあまりないですし、貴重な体験が出来ました。それにしても、皆が椅子に座って静まり返って音に聴き入っているさまはちょっと異様な感じで面白かったな(笑)