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2005年10月25日(火)
『胎内』スペシャル・トーク+α

『キャッチボール屋』関連、どんどんアップされてます。

■TIFF『キャッチボール屋』舞台挨拶レポート
■cyber TIFF channel『キャッチボール屋』舞台挨拶動画

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『胎内』スペシャル・トーク@青山円形劇場

シアターガイド主催のトークショウ。出席者は『胎内』全キャスト(予定ではなかった奥菜さんも参加!わーい)にスズカツさん、司会にライターの徳永京子さん。この徳永さんと言う方がいいキャラで!出席者とも気心が知れているのか、鋭いツッコミでかなり面白い話を聞き出してくれてました。アフタートークとは違い未見の観客もいる状況だったので、ネタバレに考慮しつつ丁寧な進行。濃かった!面白かった!

以下記憶で起こしているのでそのままではありません。間違い等ご指摘頂ければ有難いです。シアターガイドのサイトにレポートが載るのを期待しつつ、印象に残ったところを書いていきます。まとめちゃった為に、話が前後しているところもあります。

撮影・録音は禁止されていましたが、記憶から書くのはいいよね…?この模様は録画されていたので、どこかでオンエアされるとか、ソフト化される予定があるのかも知れません。そうなったら、このレポートが如何に私の脳内で変換されたものか明らかになります(苦笑)その時はまあ、個人の変換ってこんなになるんだ〜と言う差異をお楽しみください(おい)

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徳永●初日から5公演。終えてみての感想を
伊達●ん〜…(考えて固まる。何かいろいろ言ってたけど支離滅裂で思い出せません…)
長塚●(奥菜さんに向かって)伊達は質問に答えてないから(場内笑)質問は『5公演終えてみての感想』だからね
奥菜●(笑)あの、初日は本当に緊張してしまって、台詞が飛んだり、靴が脱げてしまったり…。もう台詞が出てこないんじゃないかってところ迄追い詰められてました。でもだんだん、落ち着いてきましたね
長塚●ほんっとうに疲れます。昨日2回公演だったし、疲労が…今ピークです。明日休演日で助かる

徳永●(三好十郎の紹介をしつつ)この三好十郎と言うひとは、ものごとを見詰めて見詰めて、見詰めて穴があいて燃えてしまうのではないかと言う程追求し、考え抜いた台詞を書く…作家だと思います。会話を書いていてもそれは自問自答だったりするような…。そして『胎内』の時代背景は、第二次世界大戦で日本が敗戦を経験した数年後。言葉遣いも昔のものです。この台詞を入れるのはとても大変だったと思うのですが
鈴木●昔の言葉遣いとは言っても、日本語で、かつて話していた言葉ですから…。方言、と考えてもいいかなと(笑)全く知らない国の言葉って訳でもないので、意味は結構ストン、と入って来ます。翻訳劇を手掛けることが多いのですが、「ん?」と引っ掛かるのはやはり翻訳劇の方。民族的なものの考え方と言うのはやはりあるので。宗教観も絡んできますし
伊達●ん〜…まあ…それは覚悟していたんで
長塚●かあっこい〜いな〜あ(場内笑)
伊達●苦労かと言うと、そうでもない
奥菜●最初は本当に台詞が入らなくて…。でも村子は何故こう言ったんだろう、と考えていくうちに、だんだん。昔の言葉遣い、と言うのは村子のことを考えていくうちに気にならなくなって
長塚●俺がいちばん台詞入るの早かったんですよね、いい加減に憶えたって意味で(笑)早かったけどいい加減で、演出助手の方に「ここが違う、ここが違う」って指摘されて。僕だけですよ、そんなに指摘されたの(笑)…まあ、確かに覚悟は…していたんで、大変…まあ大変でしたけど、それを苦労とは。あと僕も翻訳劇を演出しますが、それよりは全然意味を掴みやすかったです

徳永●戦争を知らない若い世代がこの作品に挑む、と言うのはとても有意義なことだと思いますが、その戦争を知らないと言うことを、演出する、演じるにあたってどう受け止めて行きましたか?
鈴木●戯曲中に佐山が33歳(終戦時が、だったかな?舞台はその約2年後らしいので、終盤「35年間の人生が〜」みたいな台詞が出てくるんだったかな…戯曲探して調べてみます)と言う台詞が出て来ます。年齢的には演じているひととそんなに変わりない。確かに戦争は知らないけれど、想像力と言うものがあるから。それは戯曲に書かれていない登場人物の年表を埋めるとか、歴史の勉強とか…確かに知識は必要ですけど…そう言うことではないんです。僕は、元々役者の中には、世界中の戯曲に出て来る登場人物全ての要素があると思っています。それに気付くか、引き出せるかと言うこと。その引き出す作業を稽古によって、
伊達●(突然)ああっ!そうかあ!そうなんだ!ああ〜、そうなんですね!(ひとり納得、皆ビックリ。場内大ウケ)
鈴木●(大笑)…その引き出す作業は、想像力によってなされるものだと
奥菜●両親の田舎が広島で、戦争の話を聞くこともあったりして…全く縁がない訳ではなかったんです。あと長塚さんに昔の映画を教えてもらって、それを観たり。服装や仕種とかを。真似すると言う訳ではないけど、観て考えて…
長塚●その映画ってのは、ホラ、単純に昔の映画だから、昔の言葉で喋ってるでしょ?映画の内容だけでなく、そういうところから。あとスズカツさんの稽古方法が面白いんですよ。稽古時間が短くて、早い段階から通すんです。「入口から花岡になり切って入ってきて、違う!そうじゃない!もう1回やりなおし〜」とかそんなんじゃなくて、止めないで通す。だからどの台詞を何回も練習するとか、この台詞は力入れて憶えたとか、そう言うのはないです。必ず1日1回通す。通した中から、気持ちの流れを掴んで行く。稽古が早く終わるので、家に帰って今度はひとりでホンと向き合う…。スズカツさんは意図してこういう稽古方法を?
鈴木●そうです(キッパリ)(ここもっと格好いいこと言った気がする…憶えているひと教えて!)
(追記:やまこさんより「確か『これが僕のSTYLE』とかおっしゃってたような。likeキムタクのようです笑かぁっこいいー。」だそうです。かー!)
長塚●かあっこい〜い(場内笑)
鈴木●(笑)これ迄やってきて、この稽古方法だと。1日1回は通す。稽古は早く終わらせる。早く帰って、1日1試合サッカーを観る(笑)

質問●「あれがナニして」とか言う台詞が多かったんですけど、これの意味がよく判らなくて。当時の放送禁止用語だったとか?
鈴木●そのまま台詞にある言葉です。まあこれも、日本人独特の表現ですよね。曖昧に、ぼかすって言う。「あれ」とか「ナニ」でまあ解ってよ、って言う
徳永●表現に規制があって代名詞にした訳ではなく、元々こういう台詞だったと言うことですね

質問●劇中では、閉じ込められて何日間を描いた設定なんですか?
鈴木●5日間、と考えております(てな言い方をしたってことは、戯曲に指定はないのかな?)

質問●先程、三好十郎はしばらくの間忘れられていて、最近になってまた注目されてきた、図書館に眠っていた作品…と言う話が出ました。その昔の戯曲を今上演することについて。また、現在どんどん新作戯曲が書かれていても、それが数回しか上演されないことをどう思いますか?
鈴木●最近になって…と言うことですが、記録を調べてみると、三好十郎の作品は過去民藝とかで上演されて、地方公演で○万人(ごめん失念)動員してたりするんですよね。でもあまり知られていない。それは自分達の不勉強だと言うところもありますが…
(これって、観客層の断絶があるってことだよね…だから今回の上演は、とても意義のあることだと思う)
徳永●『胎内』を選んだのは?
鈴木●圭史くんとやろうって話になって、最初は外国の作品から探していて。ここずっと翻訳作品の演出が続いていて、自分では書かなくなって…気付いたら10年くらい経ってたんですけど(笑)
そのうち日本の作品はどうだろうってことになって、いろいろ読んで…その中からピンとくるものがあったのが『胎内』で。で、圭史くんも読んでみてピンときたのがやはり『胎内』だったと。やはり名作なんだと思います。そしてこの名作を演出しない手はないだろう、演出したい、と思った。圭史くんもやってみたい、と思った。古い新しいに限らず、名作は何度でも上演されるだけの何かがあるんです。ピンとくる何かが。名作は演出したいですよ。名作を、演出したい。そして自分も来年辺り…別に具体的な話がある訳ではないんですけど…新作を書きたいですね。で、自分の書いたものは名作でなくても演出します(笑)

質問●村子の台詞に「どうしてひとは生まれてくるの?」と言う台詞がありますが、それに対する佐山の台詞が印象的でした。あれだけ日本人を蔑んでいた佐山から出て来たこの台詞を、演じる側は何を思って言っているのでしょうか?また隣でその台詞を聞いている花岡…多分意識がどんどん遠のいている状態なんだと思いますが…その花岡は、遠のく意識の中で何を思ってそれを聞いているのでしょうか。「ひとは何故生まれてくるの」か、そして「ひとは何故生きる」のでしょう
伊達●あの時何を考えているか…………あのー…………段取り的なことに(場内ジワジワと笑)なっちゃうんですけど…「ここで動いたらお客さんの注意がこっちに向いちゃうから、動かないようにしないと」とか(場内爆笑)「目立たないようにしないと」とか…(もう大ウケ)。あと、「ひとは何故生まれてくるの」か、ですよね…………(固まる)
長塚●多分このまま1時間くらいああですよ(場内爆笑)
徳永●では(笑)長塚さんは?
長塚●佐山はいちばん揺れがありますよね。日本人を軽蔑して、その日本人である自分を嫌悪して、でも最後には…。ちょっと直接的な話になっちゃいますけど、佐山は…不能者って設定じゃないですか。それが再生…うーん…再生するんじゃないかって思いますね…。何を考えて台詞を言っているかって言うのは、あのー……この芝居、ほんっとしんどいんですよ。終盤は本当に疲れて、正直もういっぱいいっぱいなんです(笑)なので何を考えて…とかなくて…朦朧としていて…自然に喋ってるって言うか…身体が勝手に言ってるって言うか…
(これ、対照的なようでいて、どちらも役者って生き物の言葉だなーと思ってゾワッときた!)

質問●あれだけ死んでもいいと言っていた佐山が「子供を作りたい」みたいなことを言いますよね。それについては
鈴木●「子供を生ませたい」、と言う台詞ですね。…種を残したい、残して自分がやれなかったことを託したい、ってことだけではないと思います。…アーサー・ケストラーの『ホロン革命』と言う本があるんですが、それに、広島に原爆が落とされたことによって、人間は個の死から種の死を考えることになったと書いてあって…自分が、個が死ぬ、と言うことだけでなく、人間と言う種そのものがいずれ滅亡するだろうと気付くことになった、と。で、僕は『胎内』を読んで驚いたんです。その原爆が落とされた戦争の直後に書かれたものなのに、「子供を生ませたい=種を残したい」と書いていること。その強さに…。
(『Thirst』でもテキストモチーフとされていた『ホロン革命』。非常に面白いんで(ヘコむけどな)興味ある方は是非)
昨日朝食をとっている時にTVで、福知山線の事故で1両目に乗っていて、生還したひとのことをやっていて。そのひとは両脚を切断して…それでも「生きててよかった」と思えるようになったと。本能、だけではない…と思うんです、それだけの力があるって言うのは。「生きたい」って思うのは。
(防空壕/洞窟の中で3人が死んでしまうだろうにも関わらず)この作品のタイトルが(命が生まれる)『胎内』なのは…そういうことじゃないかなって。それで、最後のあのシーン(母のような村子、胎児のような佐山と花岡)になりました

徳永●それでは最後に、今日の感想を
伊達●感想ですか…(固まる)
徳永●伊達さん、伊達さーん…
伊達●あっ、あのっ、さっきの質問の答え!「ひとは何故生まれてくるの」か!(場内爆笑)中学生の時「ひとは1日にひとつ創ってるんだよ」と言われたことがあって。その時は自分は消費するばかりで意味がわからなかったんだけど…でも、今こういう仕事をするようになって、「創る」ってことが……芝居を観てくださった誰かの気持ちが何か動いたり、何かを感じてくれたり、そう言うことがあれば、「創った」ことになるのかなあって…。………あの……こんなんです
徳永●バッチリです!(場内爆笑)

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伊達くん…天然と天才は紙一重だよ…あれには誰も勝てませんよ…最後は全部持ってっちゃったよ(笑)スズカツさんが非常に興味を示しておられましたよ、珍しい生き物を観察する目だった!(大笑)途中「おねむか?おねむなのか?」とこっちが心配する程眠そうに目をこすっていたり、目が離せないよ!それなのに最後こんないいこと言って。ああ面白かった。

だんだんクリアになってきた。そしてやっぱり飴屋さんのことを思い出した。飴屋さんは箱に入っている間、死ぬことが頭をよぎったと言っていた。理性は否定するんだけど、どうしてもそのヴィジョンが見えてしまう。でも、箱から出てきた時、それ迄子供は持たない、遺伝子は残さない(それを作品化したのが『パブリック・ザーメン(公衆精子計画)』)と明言してきた飴屋さんが「子供を生みたい」と思った。飴屋さんの場合は「生みたい」だ。それはどういうことなのか。

うーん、実際に「産む」のは女だけど、男がいないと命は「生まれない」訳で。そういう意味では男も「生む」ことになるよね。偶然だけど、今職場にふたり妊婦さんがいるので、いろいろ思うところがあります。

勝手に結び付けているかな、と思っていたけれど、飴屋さんは『胎内』を紹介している。これは偶然なんだろうか。観に来るのかな。そして何を考えるだろう。

リピートが楽しみ。