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2004年10月09日(土)
『恋の門』『溺れた世界』

台風の中ハシゴ。

『恋の門』@シネマライズ2F

初日初回舞台挨拶付き。松尾さん、龍平くん、若菜ちゃん、羽生生さんが出席。龍平くん喋るようになったねえ。以前より、だけど。「台風の中こんなに沢山のひとに来て頂いて…」ときちんと感謝の意を表してました。その後は喋る気もなかったようで、マイクをポケットに入れてしまってました(笑)松尾さんスーツ姿が決まってました。

リピートするので本編の感想はその時に。私は非常に楽しみました。痛かったし面白かった。大竹しのぶさんのメーテルがかわいすぎた。何で似合うんだ!すごいよ!

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午後から仕事(おつかれでした)のナミさんと別れ、ジェンヌと合流。ELECTRICに行こうってことで原宿に移動。EX'REALM(ここはほんとうまいなあ)でお昼を食べている頃から雨が強くなってきて、キャットストリートに着くと店が軒並み閉まっている。台風来ると皆帰っちゃうのね。嫌な予感がしつつELECTRICに着くとやはり閉まっていた…がーん。どしゃぶりの中ねこがふらふら歩いている、流石キャットストリート。屋根があるとこへ逃げれ!

仕方がないので早めに三茶へ移動。しかしキャロットタワーから出ると大変そうなので、タワー内をうろうろ。白井さんに遭遇してビビる。初めて展望台のぼったよ!雨の上空もまたよろし。

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『溺れた世界』@シアタートラム

うわーどっしりだ。こういうの大好きだ。リピートしたいなあ。以下ネタバレしてます。

美しい者が醜い者から迫害される世界。美しい者が発する輝きは、光量計を反応させる。美しい者は非市民として狩られる。美しい者に魅了され、彼等に協力した醜い者=市民たちは、拷問を受け殺される。その様子を撮影した映像は街頭で流される。

市民ダレンは非市民のターラとジュリアンを匿う。市民に捕らえられることを恐れたターラは、自分も死ぬつもりでジュリアンを刺していたが、それは叶わずダレンの力を借りることになる。生活は困窮していき、ジュリアンは衰弱していく。ターラはジュリアンと相談して自分の髪を切り、それを金に換えてくるようダレンに頼む。ダレンは市民のケリー(非市民を探す警官でもある)に髪を売る。ケリーは美しい者の輝きに憧れる。

中盤迄、不思議に耽美なSFみたいだなと思いつつ観ていたが、ジュリアンがターラの歯をむしりとった(歯も金になる。非市民の肉体は“売れる”)辺りから一癖あるなと感じ始めた。あくまでも舞台上は美しい。言葉の恐ろしさをひしひしと感じた。ジュリアンが焼けていく描写は本当に恐ろしく、言葉でひとは殺せるものだなと思った。

極端な話、思い込みは恐ろしくて、でも大事なものだと言うこと。ダレンはターラを汚したと思っている。でもそれで彼女を世界から救えたと思っている。実際その行為の後、ターラが街に出ても、醜い者たちは彼女に手を出さない。美しい者だと気付かない。輝きを失ったからだ。「僕達は仲間だ。同じなんだ」とジュリアンは言ったが、「僕の輝きの前には誰も手が出せない」と通りに出ていく。そこで殺される。

ダレンはターラを救えたと思っているし、ジュリアンとケリーはあの世とも言える世界で安らぎを手に入れたようだ。それではターラは?

美しい、醜いの基準に一応線引きがあったのがちょっとひっかかった。勿論心の中の美しさ、醜さも表現しているのだろうが、台詞に「肌が汚くて、歯ががたがた(記憶が曖昧だけどこんな感じ)」=醜い、と言うルール付けのような描写があった。これがあるとやはり見た目のことなのか?とも思えるし…。昨年のリーディング(キャストは違う)を経ての今回の公演なので、過程を観ていきたかったなあ。作者のゲイリー・オーウェンはウェールズ出身の劇作家。他の作品も観てみたいな。

哲司さん格好よかったー。「赤毛物、苦手で。俺がジュリアンなんて友達笑うだろうな」なんてプログラムで言ってたけどいやいやどうして。途中から裸足になるんだけど、それが何か…いいんだよねえ。ただ立ってる、ただ寝てる、と言うたたずまいに不思議な色気がありました。上原さくらちゃんはバラエティ等で観ていて怖いコだ!と思っていたけど(笑)容姿に似合った堂々としたターラを演じていました。暗い表情が美しい。立ち姿も綺麗。寝ているジュリアンの腰の辺りを優しく叩いたり撫でたりする動作がとても印象に残った。また舞台やってほしいな。

岡田くんは、残酷な言葉が並べられる台詞を操る場面よりも、表情や目が印象に残った。ターラに振り向いてほしい、ターラに自分の目を見てほしい。そういう顔。ダレンって切ないよー。つみきさんは声に力があった。ある意味いちばんこの世で報われなくて、あの世で救われたようなキャラクターのケリー。彼女の最後の台詞は、つみきさんの声で私の記憶に残るんだな。

昨年の『宇宙でいちばん速い時計』とは一変、装置も何もないまっさらな舞台に映像や照明を映し込む白井さんの演出は『ファウスト』辺りから顕著になっている。モノトーンで統一された舞台、時間の経過や場所、登場人物の心境の変化を、役者への振付で表現する“型”も興味深かった。

ヴェルヴェットのインナーや、グラデーションに染め上げたドレス等、衣裳が特徴ある面白いものだった。『ママがわたしに言ったこと』の衣裳も手掛けた前田文子さんの作品。

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劇場を出ると、見事に台風一過の静けさ。雨も止んでいます。え、もう通り過ぎちゃったの?辺りに傘やら看板やらが散乱していて「すごかったんだ…」とやっと実感が。観劇していた時間に直撃したんだな…劇場の防音施設ってすごいなあ。