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2004年07月10日(土)
KKプロデュース #4『レンズ』

KKプロデュース #4『レンズ』@サンシャイン劇場

「アリは自分の体重の700倍もの重さのものを持ち上げることが出来る。しかしアリにはそんな自覚はないんだな」

こんな台詞を自分(の役)に向かって言わせる。しかもこれ、自分が書いた台詞です。小林さんて、すんごい自覚して書いてるんだろうなここ…「自覚がない」ってことを、じゃなくて、「持ち上げる能力を持っている」の方をね。結構ゾワッと来ましたよ。う〜ん、頭の中が気になるひとです。KKPは初見、ラーメンズは映像で数作観た程度。

以下ネタバレ箇所あります。未見のひとはご注意ください。

小林さんてかなりのツワモノってイメージがあったので、相当トリッキーな展開を覚悟していたのですが、逆をつかれた。ガツンと正攻法で来ました。きちんとした謎解きもので、設定をうっちゃらない丁寧さがある。品がいいし、面白かった。登場人物の名前も洒落てたなー。蓮司、桜太、梅衛門、駿菊。花の名前が入ってるんです。小林さん演じる天城だけ茎太郎で、花じゃなくて部位ってところがまた意味深。

椎名林檎さんのショートムービー『百色眼鏡』のちょっと前、天城が探偵稼業を始めるきっかけとなったお話、と言う設定。『百色眼鏡』を未見でも全く問題ない作りですが、観ていたら観ていたで、あのあと天城は駒形の依頼を受け、不思議な世界に入っていくのだな…と思うとちょっと切なくなった。帰ってから『百色〜』DVD観直したんだけど、あ〜、天城のこのブーツって駒形から貰った(分捕ったとも言う)ものなんだ!と連想出来て、楽しみが増えましたうふふ。

設定繋がりと言えば、一部の観客が異様にウケていた台詞が数箇所あった。これは以前のKKPかラーメンズのネタが絡んでいるのかな。「シンバシ!」ってのはラーネタらしいですな(笑)さがしてみよー。

ステージ空間にピタリと合わせたような舞台美術も良かったなあ。西日が当たる八角形の図書館。正面に階段、その下に司書の机。2階建てで、上にも下にも本がびっしり。これ全部本物の本だったのかな、後ろの席からだとはっきりとは判らなかったんだけど。本を運ぶお駄賃がグリコってとこもナイス!

役者陣はとにかく久ケ沢さんが反則!(大笑)おかしい!噂は聞いていたので覚悟してきたのですが…小ネタも多いし!ひとが話してる別の場所でちょこちょこちょこちょこ何かやってるし!い〜や〜おかしかった〜、あのキャラはズルいよ(笑)西田さん、犬飼さんもKKPレギュラー陣ならではのテンポの良さで、笑わせてくれました。

小林さんはなんっつうか…どういう喋り、どういう仕種をすれば婦女子の心を鷲掴みってのが判ってんだろうなあってなツボつきまくりっぷりでかなりヤラれた…。自分のかわいさを良く判ってるよこの罪つくりが!さとう珠緒ちゃんと張り合って長井秀和のネタにされるがいいさ!舞台上ではこんななのに、書くものはあんななんですね…こ、怖いこのひと…絶対騙される…(何で)

で、6年振り、舞台は二度目の大森くん。ちょっと母心気分で観てしまいそうでしたよははははは。通る声質ではなく、腹からの発声でもない。サンシャインくらいの広さであの声が有効か、ここがいちばん心配だったのですが…不思議な声だなあ。比較的後ろの席だったのにきちんと聞こえる。滑舌が良いので言葉が聞き取りやすいと言うのと、つんのめって動くことがないからだろうな。役柄もあるけど、妙に落ち着いて見える。相手の出方をきちんを掴んでから動く、話す。しかもこの落ち着き感が後で効くんだよね。心霊現象による事件を捜査する部署の刑事なのに、実は「おっかないことが苦手」だったと言う。あんなエリートなナリ(髪なでつけててデコ全開)して何やねんと突っ込む突っ込む!これが判明してから駒形のキャラががらがらと崩れて行き、とてもチャーミングに見えてきます(笑)怖い局面が訪れるといちばん早く逃げるんだもん!もうおっかしいわ〜あんなカッコつけてたのに。こんな役柄で書いてくれて有難う小林さん!

そして実はツッコミ役だったってのもポイント高い。しかもそのツッコミがまたボケになると言う、この前やった『ドライブイン・カリフォルニア』における仲村トオルさんのようなポジションです(笑)で、そういう風に書かれたポジションにすんなり“そういうもの”としていられるって言うところがこのひとの真骨頂のような気がした。独特の存在感があるんだよね…ただ「いる」ように見えてしまう。んな訳ないのにね。「役者は置き物」「監督に言われた通りやっただけ」とかしゃらっと言うひとだしね。一筋縄ではいかないなあ。そこが面白い。

あと身体が大きいのでやっぱ舞台映えする!腕脚のリーチがあって、階段駆け上がる時の身のこなしとかすっごい綺麗。眼福だわおほほほほ!フレーム切らないで全身を観られるってのは舞台ならではだね!で、そこを逆手にとったのか「うるむな!」って突っ込まれるシーンがあったのがおっかしくて。あーうるんでんだー(笑)黒目部の本領を発揮していたようです(笑)こんな台詞書いてくれて有難う小林さん!

いやはや楽しかったです。チケット2枚パーにしたのは悲しいですが(泣)初日観て面白かったらリピート回数増やそうと思っていたのに、前売り持ってた分すら行き損ねたからなー。くやしい…。

最後に内容とは関係ない話を2つ。

■上演中に地震があった
ひー。最初なーんか「ゴゴゴ…」って感じがして「音響?」と思っていたらガタガタっときた。客席のどこかしこから「じしん?」って声がそよそよと…役者さんたちは動いていたから気付かなかったかな?ちょっとビビりました。さえきさんは「後ろの席のやつ、ビンボーゆすりすんな!」とムカムカしてたそうです。違うよ!(笑)

■サンシャイン劇場と言えば
“出る”って有名じゃないですか…ひー。終演後思い出してゾワ〜。そんな劇場でこの話て!怖いよ!(笑)
以前じてキンのトークショーで聞いた面白怖い話があって。「(第三舞台の)長野さんが、下手からハケて衣裳替えをしつつ上手にすぐ登場しなきゃいけないシーンがあって、ある日の本番中全速力で着替えつつ舞台裏を走っていたら、目の前を脚だけのなにかが走っていた」。…ギャー!(泣)でも長野さんは「『あっ!』って思ったけど、本番中だったのでそれどころではなく、その脚を追い抜いた」。……ぎーやー!!!「終演後に改めて怖くなったわ〜」と言ってたそうです。ショウ・マスト・ゴー・オンって素晴らしいですね…すごいよ長野さん…

いやいやでもいい劇場だよサンシャイン!(笑)ラッコもいるしね!(それは水族館)