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2003年01月03日(金)
『真情あふるる軽薄さ 2001』(DVD)

『真情あふるる軽薄さ 2001』(DVD)


こちらも景気付け。いよいよ高橋洋くんが8日に舞台復帰します。

これ、舞台作品を映像化したものとしてはかなりいい出来だと思います。舞台を観ることにおいての自由度は、観客が視線を選べると言う部分が非常に大きい。どこを観るかと言うのは観客の主観にあるわけで、これを映像化〜視界をカメラのフレームが選ぶ〜すると言うのはかなり難しい。

特にこの作品は、舞台だけでなく客席も演技の場として使われるし、冒頭の入場する観客に高橋くんがまじっているところや、客席にヅラを持って入っていく古田さん等(笑)その前後をうまく見せておかないと、「いつの間に高橋くんが行列にまじってたの?」とか「なんで古田さんが客席に降りてるの?」とか訳がわかんなくなる。そこらへんの処理が巧かったです。

うーん、とは言ってもこれ、映像が初見のひとはどうですかね。実際舞台を観た者としては結構楽しめましたが。高橋くんが挑発役なのでずーーーーーーっとテンション芝居だし、退くひともいるかも。映像と言うフィルターを通すとそこらへんも一歩退いて観ることが出来ると言う点では興味深かった。

舞台内容については…初日迄にかなりすったもんだがありましたが、最終的に舞台に立ったひとを観ることだけが結果なので。勿論当初のキャストでも観たかったと言う思いはあるが、舞台に立ったひとたちは本当に素晴らしかった。ああ、これももう2年前のことか。DVDと言う形で残っているのは嬉しいな。

やっぱり古田さんが凄い。いろいろ困難があったこの作品をここ迄引っ張ったのはやはり彼だ。1舞台に1古田、演出家の愛人と言われる彼ですが(笑)どの演出家と組んでも面白い。つかこうへい氏が筧利夫さんを評した言葉、「彼は人間じゃなくて、舞台役者と言う生き物」ってのを思い出す。同じ字面の台詞でも、彼の口が語ると格段に言葉が光る。蜷川さんとこの演出でここ迄笑うとは思わなかったもんなあ。相手との間が噛み合わない部分もあったが、そのフォローを自分の側に持ってきて消化出来る剛腕さも、この舞台では随分頼りにされていたと思う。彼がいて本当によかった。

古田さんにここ迄許した蜷川さんも、特典映像のインタビューでご本人が言ってますが「変わった」「役者に任せるようになった」部分が大きいと思う。そしてこの歳になってまだまだ変われる自分を面白いとも。イカしたじいさんです(失礼)大好きです。

初舞台だった鶴田真由さんもトーンを低くした声の設定からして良かった。「じゃかあしい!」って台詞がこんなに似合うとは…このインパクトが強烈だったので、今後彼女が舞台をやることがあったら絶対観に行こう!と思ったものだ。あと映像で観て脅威だったのは、化粧崩れしないとこ(笑)!顔に汗かかないし。水とかかかって随分顔が荒れそうなのに美しいのなんの!これ才能ですよ一種の!いやー美しさの中に凛とした強さもあって、かなり惚れました。ご結婚おめでとうございます(笑)中山さんについて行く為、これからはN.Y.が活動拠点になるそうなので、舞台はしばらくないかもな。またの機会を楽しみにしています。

さて高橋くん。いやもう…よくやった!テンション芝居がずっと続くので、楽日の挨拶の時も表情が堅くて茫然自失の状態で、鶴田さんに肩を叩かれた時に初めてホッとした表情を浮かべたのをよく憶えている。あの挑発する男の逃げ場のなさ、やりきれなさ、そして権力側にあっさり殺されてしまうあっけなさ、全てがハマッていた。このひとはどんどん化ける!と思った。

だからこそ『マクベス』の降板には打ちのめされたもんでした。あの局面を乗り越えた役者が何で!とかね…。彼を再び舞台に迎えてくれた蜷川さん、スタッフの方々にも本当に感謝。8日の初日、本当に楽しみにしている。

作品としては大好きなものです。清水邦夫氏の負け、負け、負けてからどうする、死ぬ迄にどうする、結局は死ぬし負ける、と言う諦めの中にギラギラと光る人間の思い、だけど結局負ける、と言うどん詰まりな作風はすごく好きだ。その中でもこの作品は、初演から32年経っていてもその絶望感は変わっていなかったところに背筋が寒くなった。再演にあたって加えたあのシーンも、あまりに当然な結果で悲しくなった。それでいい、それがいいんだと思う。