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2002年08月25日(日)
『アテルイ』

いのうえ歌舞伎・松竹MIX『アテルイ』@新橋演舞場


人類ってホントやってること変わらんのな。聖戦と言う名のもとに行われる大量虐殺、民族間の争い、神の存在を信じるが故の過ち。9・11はいつでもおこっている。この種は絶対滅亡する。ここ迄長続き出来たこと自体が奇跡なのかも知れない。

なんてことを新感線を観て思うとは…(苦笑)企画は2年前から立っていたそうだ。演劇の普遍性と現在性を目の当たりに出来た。

稽古の9割が段取りと言う新感線のカラーからして、脚本は説明的な台詞が多くなってしまう印象があるのだが、今回はそれが効果としてうまく機能していた。歴史的背景を踏まえての物語なので、説明があると助かる。脚本もかなり言いたいことがあったのだろう、力の入ったもので、その分シーンが間延びする印象もあり。その部分の鈍さが気になると言えば気になる。再演する時は(やるでしょ?やってよ!)もっと刈り込めないだろうか。

殺陣のスピードにおいては現在最高峰のものが観られると思われるいのうえ歌舞伎、今回も凄かったっす。主役ふたりがとにかく格好いい。堤真一さんの豪傑、市川染五郎さんの流麗な殺陣があれ程のスピードで、しかもたっぷり観られる。染五郎さんは、堤さんと相対すると体格的に不利なのだが、立ち姿と所作の美しさが素晴らしく、役への思い入れもあるのだろう、圧倒的な存在感がある。いやあ、実を言うと染五郎さんをこんなに格好いいと思ったのは初めてです。堤さんはああいう古代の衣装がとても似合う。肩の形が綺麗だし、刀を持った姿が様になる。前日に『DRIVE』を観たばかりだったので、あまりの役のギャップにニヤニヤ。

あと西牟田恵さんが凄く良かった!10数年ずっと観てきているので、こんな大きな役をガッチリ出来るようになったんだなあ…となんだか感慨深いものがありました。同世代なので、襟をただす思いで観た。ダンスでの躍動感は周知の通りだが、殺陣でもあんなに動けるとは新しい発見。染五郎さんとの殺陣の迫力は凄かった。水野美紀さんはちょっとヒヤヒヤする場面もあったが、よく動けている。初舞台でこれだけ出来れば充分じゃないかな。渡辺いっけいさんは得意の酷いひと(笑・でも最後は…ね?)を水を得た魚のように演じており、「ああ〜!!腹が立つアイツ!!」と憎らしくて憎らしくて仕方がないコウモリっぷりで笑わせたり泣かせたりしてくれました。憎い。

歌舞伎からのお客さんも結構いたようで、「高麗屋!」等の合いの手を絶妙のタイミングで入れる男のひとがいてこれもよかったな。場が盛り上がった。ちなみにラストの堤さんと水野さんには「ご両人!」と声がかかりウケていた(笑)。

個人的に残念だったのは、席が本花道の真上の席だったこと。花道を2本組むと言うアイディアは素晴らしいが、それは正面から観た場合に限るね!やはりメインに使われるのは本花道(下手側)なので、キメのシーンがたくさん、たくさん観られなかった。あああの時何やってたんだよおおおう!(泣)

はやくも再演が観たい。これはきっといつでもやれる。いつでも通用する。今はとにかく千秋楽迄、皆さま怪我なく御無事で!