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2002年05月12日(日)
『はじめての美術 絵本原画の世界展』

『はじめての美術 絵本原画の世界展』@練馬区立美術館

土曜日、『幽霊〜』の前にこれに行ってきました。

『こどものとも』の作品を中心とした絵本原画展。出展者は(敬称略)秋野不矩、朝倉攝、池田龍雄、大沢昌助、太田大八、荻太郎、小野かおる、桂ゆき、坂本直行、佐藤忠良、田島征三、長新太、寺島龍一、富山妙子、永井保、中谷千代子、なかのひろたか、西巻茅子、羽根節子、稗田一穂、土方久功、堀文子、三芳悌吉、村山知義、山下菊二、山田三郎、山中春雄、山本忠敬、山脇百合子、横内襄。

戦後の絵本史を大きく変えた、福音館書店の『こどものとも』。月刊で発行された多くのこれらの本が、今でもハードカバーにお色直しされ、再版され続けているところにも、このシリーズのクオリティの高さが伺えます。初代編集長の松居直氏は、他ジャンルの作家―彫刻家、日本画家、マンガ家等―に挿画を依頼し、これ迄になかった絵本を出版しました。当時はそんな事知りもしないで読んでましたよ(つうか知る由もなし)、怖くて眠れなくなったりしましたよ…田島征三氏の『だいふくもち』とかな。今回も原画観たら当時の恐怖をまざまざと思い出し。まあ今思えばそんなんもオモロくて良かったんじゃないかと。怖い怖いと言う割に何度も読み返してたもんなあ。

とはいえかわいいものもあります。こん中でいちばんメジャーなのは『ぐりとぐら』でしょうか。いやー懐かしい!これのパンケーキとアニメのハイジのチーズは今でも食べられるもんなら食べてみたいもんだよ!改めて観ると、パンケーキの匂いにつられて集まってくる森の仲間の中には、『いやいやえん』に出ていたこぐまのこぐ(ナイスネーミング)もいるじゃないか。あんたおかあさんの作った笹(だったよな確か)でまいたおにぎりだけじゃ足りんのか。ぎゃーかわいいかわいいんじゃー。

今回作家のプロフィールもしっかり紹介されていたので、その確認も含めて面白かったです。偶然と言う訳ではなく、そういう時代だったんでしょうが、この後行く『幽霊〜』の作者安部公房氏も参加していたアヴァンギャルド芸術研究会やらアンデパンダン、从会やら前衛芸術に携わっていた面子の多いこと多いこと。先日町田で見たマヴォのメンバーもいる。こ、こんなひとらが子供の絵本を…これは編集者の思い切りが素晴らしいですよ!面白い本を沢山出してくれて有難う!

朝倉攝氏は、近年は舞台美術の仕事が主で、絵はなかなか観る機会がないので面白かった。長新太氏も、改めて観ると作品ごとにいろんな実験をしているなあ。これは子供がうっかり「俺にも描けるー!」て勘違いを起こすよな。で、その勘違いは凄いいい勘違いだと思うなあ。調子に乗れば結構とんでもない事が出来てしまうもんです。今回の展覧会は、タイトルにもあるように子供むけの解説もちゃんと付けていて、実際会場には子供が沢山。絵本コーナーやビデオコーナーは自分の膝丈くらいのちっちゃい子がわらわらいて躓きそうになりました(笑)子供は原画よりも実際に触れるめくれる絵本の方が楽しいようでこっちの方が人口密度が高い。解説文にもありましたが、「絵本は、文章と絵だけではなく、印刷や造本までを総合してこう言う」もの。これでいいのかも知れないな。この子らがおっきくなった頃にまた原画を観て、その素晴らしさを感じられればいいんじゃないでしょか。その為には作品をしっかり保存しておかないとなあ。

なんて普段はあんまり考えない事を考えてしまったりしたのでした。