山の仕事でずっと木曽谷にいる。
どういうわけか、身籠ると木曽の仕事が入る。
五ヶ月の身体で山腹を這い上がり、谷を下るのだから、無謀極まりない。 同行のSさんや他の人をハラハラさせている。
でもこれは、私の巡礼なのだ。誰も理解しないかもしれぬが、そう思う。
人の世界を離れ、谷を分け入り、この世とあの世の境目に一旦行かないことには、 新しい生命をこの世に迎えることができぬ。そういうことになっている。
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朝日をあびて輝く200年を越すヒノキの大木に、あるいは 美しい岩肌をみせながら蛇のように山腹に横たわるナメ滝に 「something great」を感じながら、
私はいま再び子どもを産もうと思います、と祈るように語りかける。
生きるものの摂理として、そうなることになったから、そうしようと思う。それだけのことだ。
三児の母となる戸惑いや理由探しといった些細な人間事から、 私はすっかり自由になった。
2010年09月09日(木) 2009年09月09日(水) 2006年09月09日(土) 2004年09月09日(木) ペンは剣
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