浅間日記

2010年11月02日(火)

寒空。今月は仕事がタイトだから、憂鬱である。

ネパールから早々に帰国した後のHは、
失った恋を忘れるかのように、日々トレーニングに打ち込んでいる。

山道具の入った荷物を紐解くこともないまま、
1mも高度を稼ぐことのないまま、
予定より半月も早くHは帰ってきた。

目的の場所はあまりにも積雪と雪崩がひどく、
取り付きにすら行かれなかったのだそうである。

そんな事態を予想もしていなかったのが敗因、と語っていた。
登山許可というものが必要なので、じゃあ隣の山を登ろうと簡単にはいかないのである。



Hの遠征登山をもう二十年近く傍観しているけれど、
-言っては可哀想だが-こんなこともめずらしい。

ヒマラヤの魅力的な山々を目の前にして、手付かずで帰ってきたのだから、
それはそれは無念であったと思うのだが、若い時ほどその気持ちを表に出さない。

そうだから、こちらもすっかりそのことを忘れていた。
けれども、Hのことだから、表向きは失敗を笑ってごまかしていたとしても、
無念のマグマがどこかにきっと溜まっている。人知れず、げんこつを握り締めて悔しがっている。

長年の付き合いで、そう思う。

2007年11月02日(金) 
2006年11月02日(木) 因縁と落とし前
2005年11月02日(水) 記憶に残るもの、生きていくもの
2004年11月02日(火) 避難とは何か


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