2010年10月26日(火) |
ハンガリー製のアルミ鍋 |
ハンガリー西部にあるアルミナ(アルミニウムの原料)工場の大型貯水池の堤防が決壊し、有毒泥土が流出した事故で、地元当局は8日、死者が7人になったと発表した。一方で政府は、ドナウ川の生態系や環境への悪影響は広がらないとの見方を示した。貯水池は首都ブダペストの西方約160キロ。近くのデベチェル付近などで被害が大きく、住民ら150人以上が病院に運ばれた。流出泥土にのみ込まれたり、有害物質に触れたことによるやけどなどが死傷の原因という。というニュース。
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高アルカリの汚泥に飲み込まれて死んでいった地域住民を気の毒に思う。
この辺りでも、田んぼのすぐ上に精密機械工場や電子部品工場などがある風景はもはやなじみのものであるし、山の方へ行くと立派な道路と工場が軒を連ねる一角があったりする。大きなトラックが日がな製品を積み込んで高速道路に乗り込んで行く。
農業が行き詰った地方自治体が工場誘致という施策を打ち出してもう随分になる。各地で競争が激化する中で差別化を狙ったのか、環境規制が妙に甘い自治体もある。
首都圏の人々が地方に抱く自然のイメージ-それは広告代理店が一部を強調して拵えたものである-とは裏腹に、 地方は、確実に都市の大消費のためのバックヤードと化している。 そこらじゅう工場と最終処分場だらけなのである。
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環境汚染は、地域のポテンシャルを根こそぎ奪う。 資産価値を減らし、莫大な浄化費用を生じさせる。 何よりも、美しい郷土の自然や景観は、二度と手に入らない。 そんなリスクに対して、誘致する自治体はまったく無防備であるようにみえる。
また同時に、化学製品が身近になった程には、私達は化学工場のリスクや製造負荷を知らない。
精錬の過程で生じる各種の反応、それが制御されなかった場合に爆発や火災が起きるかもしれないこと、目的となる物質だけを取り出した後に大量の残滓が発生し、それらは既にそのまま自然界に戻すことはできないということ、化学反応のために大量の電力や水を使用すること、などについて、ほとんどイメージをもたない。
アルミ鍋の一つでも家にあるのなら、 私達はこうした事故と無縁ではないのである。
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