キノコのシーズンもそろそろ終盤である。 そして、ここ信州では天然物のきのこをめぐって、ある騒動が起きている。
それは、長野県松本市の公設地方卸売市場で、業者が誤って毒キノコ「クサウラベニタケ」を販売、購入して食べた2家族の計6人が食中毒になっていたことが分かった、というニュースである。
山採りのキノコは同定が難しいから、素人判断で食用すべからず、というのがこのへんの常識だ。 しかし市場に出回っているものが危ないとなると、信州人に与えるショックは、これはもう「赤福問題」の比ではないんである。
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そうだから、昨日山の中で馬鹿でかい3本のキノコを見つけ、 食べられるかも知れないなどといってKさんが嬉しそうに採っている時には、 私は、そんなグロテスクなのやめなさいよと冷ややかな視線を送っていたんである。
けれども、しばらく持ち運んでいるうち強烈に漂ってくるその芳香は、 もう間違いようもなく、キノコの王様と呼ばれる「あれ」である。
次第に、これは例え毒キノコであっても食すに値する、とさえ趣意を翻した私は、 無言のうちに、Kさんにあんな冷ややかな視線を送らなければよかったと後悔すると同時に、 もし「あれ」だった場合にはどうやって分け前を頂戴するかと、いやしい考えを巡らせながら山を歩いていた。
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合流したA君より、ああこれは間違いなくツガタケですよと太鼓判を押され、小躍り、大躍り。 ツガタケとは、マツタケの別名である。
あんな場所に何故出ていたのかわからないが、 止山でもないこの山ならまあ問題ないだろうと、遠慮なく賞与に預かることにする。
Kさんはもちろん、気前よくみんなで山分けしてくれた。
2006年10月26日(木) 世界の重ね方 2004年10月26日(火) 被災
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