浅間日記

2010年10月09日(土) マーケットの小ささを評価する

昨日の続き。
件の映画館の化粧室で、ピカピカの鏡を見ながら考えた。

どうして、この行き届いたサービスの施設ではだめなのか。
それは多分、母数の問題であると結論づけた。

一つの商売において、お客の数が10人であれば、上得意である。
ビジネスであれ、立派な人間同士のかかわりあいが成り立つ。

それが100人、1000人、一万人と増えれば増えるほど、縮尺は大きくなり、
客ひとりの存在は点のように小さくなっていく。

商取引はエクセレントで最新式なシステムに飲み込まれ、
私達はそれに流されていかざるを得ない。

何千人、何万人という顧客を扱うサービス業においてはもはや、
供給する側もされる側も「人間に対するサービスのやりとり」という意識がなくなっていく。

挙句、本棚を見ながら「いらっしゃいませこんにちは」という古本屋ができたりするんである。

そんなものにばかり囲まれていると、いつの間にか自分自身ですら、
1:1のスケールで自分の存在を認めることができなくなってしまう。

私はそのことが恐ろしいのである。


巨大な資本は、フードチェーンを展開し、総合アミューズメントを成功させ、宿泊業界に乗り出し、エクセレントで最新式なサービスシステムを私達に提供するだろう。

これに対して地域のささやかな商売というのは、まったく歯がたたない。
店の主は愛想が良いとは限らないし、時々品切れも起こす。
何より、そんなに沢山の客をさばけない。
ものすごい「大ハズレ」の店だってあるだろう。

それでも私は、自分の縮尺を狂わせないために、
清濁あわせのむつもりで、こちらを選ぶだろう。

マーケットの小ささを評価する。
この結論は、私には結構便利だ。

2007年10月09日(火) 私はあなたと親しくしたい
2006年10月09日(月) 徒労
2005年10月09日(日) 貧困救済の役割分担


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