朝の食事時のこと。 夏休みに入るとスズキメソードの人達が学校にやってきて、自分の教室を使うのだ、と薮から棒にAが言う。 スズキメソードって何だいとHがいぶかしげに聞く。この人は明らかに宗教関係と勘違いしている。
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毎年夏になると、小さなバイオリンを持った子どもとその親が全国からやってきて、この街にあふれる。 街一番のホテルは貸切られ、一番でないホテルも貸切られ、 ホールは予約済みとなり、宿と練習場を往復する大型バスが市内を駆け巡る。
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教室に置いてある自分の粘土作品にいたずらしないかなと、心配そうにAが言う。 良家の坊ちゃま嬢ちゃま達はそんなことしないよと私が何気に言う。 そこでようやく心当たりのあったHが、あの半ズボンの子ども達か!と宇宙人のことでも言うように言う。
才能教育研究会って言うんだよと説明すると、うへえと、興味のシャッターを下ろし始める。我家には一生縁がないな!などと言っている。
そんなことないでしょう、とパンにバターを塗りながら反論する。 あの子達が一生懸命練習して一流になってくれれば、 我々はこの先も、悠々と素晴らしい音楽が聴けるじゃないの、と。
演奏家と聴衆は、車輪の両軸である。 どちらも共に成長してこそ、芸術文化が花開くというものだ。
それもそうだなと一同の同意を得たところで、皆川さんのラジオが始まった。
2007年07月19日(木) さよなら先生 2006年07月19日(水) あばれ天竜、檻を壊す 2005年07月19日(火) ドキュメンタリーの光と影
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