上田市は13日、松くい虫対策で毎年行ってきた農薬の空中散布を今年度は中止することを決めた。今月末に開く市松くい虫防除対策協議会で説明し、承認を得て正式決定する。市内の母親らがつくる「こどもの未来と健康を考える会」(田口操代表)が「農薬の空中散布により健康がおびやかされている」として市に中止を申し入れており、母袋創一市長は「人体に影響がないとは言い切れない。要望を真摯(しんし)に受け止め今年度は見合わせようと判断した」と話した。
上田市が松くい虫対策の農薬空中散布を中止する方針を固めたことに対し、県林務部の轟敏喜部長は14日、信濃毎日新聞の取材に「費用対効果を考えると、空中散布に替わる有効な被害予防策はない」と述べ、空中散布を行う県内市町村を引き続き支援していく考えを示した、というニュース。
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松くい虫被害というのは、アカマツという樹に固有の病虫害で、 日本列島の西から東へ被害が拡大している。
10年ほど前東海道新幹線で西へ行くと、大阪から西沿線のアカマツ林は一面に茶色くひどいものであったが、今やアカマツ林はすっかりなくなったと聞く。
目下のところ被害の最前線にあるのは、この信州や関東以北であり、上記の記事にあるように、長野県は松くい虫対策を森林管理の重要課題としているわけである。
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件の会によると、農薬散布の後、複数の子どもに高熱や多動などの症状が表れ、大人にも頭痛や倦怠感などの症状が出ているということである。因果関係は未だ明確でないとされているが、病院で行った調査結果を提示するなどが、本年度の中止につながったと思われる。
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このことについては、色々とわからないことが多い。
一つには、農薬の空中散布をはじめとする、松くい虫対策の効果の問題。
結果も出ないのに、農薬を森林にばらまき続ける意味がどこにあるのかわからない。空中散布される農薬だけでなく、地上での薬品処理も含めて、膨大な量の有害化学物質が、県内の、否、国内の森林土壌を汚染している。
EUでREACH規制による規制が行われ、国内で化審法が改正されるなど、有害化学物質の取扱は今日かつてないほど厳しくなっている。 いかな森林づくりと言えども、そうした動きに知らぬ顔をしていてはいけないだろう。
もう一つには、アカマツ林に固執する意味。
既に西日本では被害が食い止められず、大面積のアカマツ林が裸山となった。 それから画期的な技術開発があったわけではないし、現実問題として被害は拡大し続け、大局的にみて同じ結果となるのは時間の問題である。
それならば、アカマツが全滅した場合に裸山とならないための方策を考えるべきであり、それこそが急務である。後継樹は5年や10年で育つものではないからだ。確かにアカマツという木が立地するところは特殊で、他のどんな樹木でも育つという場所ではないことが多いから、アカマツを残さねば樹林が成り立たぬという気持ちも分かる。しかしだからこそなおさら、丸裸になってしまう前に、少なくとも低木類で表土を覆い土砂の流出を防ぐような対策に予算を割くべきだ。
繰り返す。防災とか生物多様性という側面を考えれば、市民のニーズは、アカマツ林ではなく、健全な森林の継続にあるはずである。いわんや人の健康をや、である。
2005年05月19日(木) 旺盛な気分 2004年05月19日(水) 国語の時間に教わったことの話
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