立冬。
庭の柿の木が、まだ実をつけたままになっている。 家主のKさんは、実をもぐのをやめてしまったのらしい。
この夏に心臓を悪くして、それでも手術後は驚くように回復し、 新聞配達に畑にと今までどおり暮らしているけれど、 さすがに柿の木に登って実をもぐのは、家族が止めたのだろう。
時計のように正確に、毎年、春には春の、夏には夏の、 秋そして冬には冬の労働を、まじめに飽くことなく繰り返していたKさんのことだから、 収穫できない柿の実が枝についたままなのは、さぞつらいだろうなと思う。
庭先で片付けをしているKさんの、ときおり見上げるようにして柿の木を眺める少し小さくなった背中を見ながら、そんなふうに思った。
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人生は永遠ではない。 Kさんの、毎年ずっと続くように見える営みも、 少しずつ変化をみせ、今までどおりできないことが少しずつ増えていって、 いつか終わりが来るのだ。
育つ者があれば、老いる者もある。 それは同じ作用の結果なのだ。
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