浅間日記

2008年06月17日(火) 環境全体主義

日本経団連が、地球温暖化の原因となる温室効果ガス削減にむけて、エネルギー効率が高い家電製品、自動車への買い替え促進など家庭の省エネ徹底を求める提言を発表した。というニュース。
提言の中では「国民は省エネ型の生活様式に変革していく必要がある」などと指摘している。


またしても「国民」である。
そもそも私達は、商売人の寄り合いなどから、それがどんなものであれ、
自分のライフスタイルを変えるよう強要される覚えはない。

この提言では、家電の買い替えを促しているようだけれど、
それは、冷え込んだ国内需要を何とかするための詭弁であろう、
とも言いたくなる。



かようにして、洞爺湖サミットを目前に、環境問題への盛り上がりは尋常でない。
とりわけ、国民意識を高揚「させねばならない」という気配が濃厚である。

何か変だと思っていたけれど、件の経団連の提言に至り、
今や、はっきりおかしいと思っている。



それはなぜか。

よいことと信じて誰も疑うこともしないスローガンというのは、
それが何であれ、大変危険なことなのである。

私だって、物や資源を大事にする生活に異論はない。
しかしそのことは、道徳観とは切り離しておくべきだ。

違うというのならば、なぜ、環境に配慮した−ようにみえる−生活が、
「善」であるのか、誰か説明してほしい。
当然、「善とは何であるか」とセットでお願いしたい。



誰にかみついているのか自分でもわからないが、
そっちがそうならこっちも言わせてもらおうというつもりで書く。

この国の環境問題は、地球規模以前にやるべきことが山積みであり、
子孫の時代への影響以前に、今現在の私たちの生命を脅かしている。

江東区豊洲や茨城県の神栖市では、深刻な土壌汚染が未解決である。
神栖市では猛烈な油臭のなかで暮らしている人がいて、発生源も特定できていない。
住民の土地は不動産としての財産価値を失い、銀行から金も借りれない。

こんなお粗末な、明らかに経済活動が原因の前近代的な「公害問題」が、
まだこの国にはうようよしているのである。

そしてもう一つ。
フェルシルトの不法投棄問題を起こした石原産業が、化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律によって年間30t以上製造する場合は国への届出が義務付けられている毒性の高い物質「ホスゲン」の大量製造を無届けで行っていたことが明らかになった。

企業の環境に対する不正も同様である。
環境問題は私たちには分かりにくく、面白くもない。
偽装の牛肉屋は廃業に追い込まれても、こうした企業は操業が許される。

さらに、もう一つ。
先日、三浦雄一郎氏のチョモランマ登頂がニュースとなっていた。
この登頂には、何億円もの金がかかっているのらしい。
「第三の極」とよばれるほどデリケートな環境であるヒマラヤで、
ドヤドヤと荷物を上げ、二酸化炭素を撒き散らし、キムチ鍋を食べたりステーキを食べたりしたのらしい。

ヒマラヤはピクニックの場所ではない。
自然へのインパクトを無視した登山をして、日本人の偉業みたいに言っている。



こういうことを棚上げにして、産業界が「国民の努力を」などと
いらぬ道徳観を押し付けるのは、全くフェアでないと思うのだ。

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