浅間日記

2008年06月10日(火) 賞賛と悔しさ

今年、Hはまた、ヒマラヤへ出かけるんである。

このことについての、ちょっとした出来事。
予定していた山とそのルートが、つい最近登頂されてしまったんである。
−それも彼らが見込んでいた方法よりスマートな方法で−、

だから、Hは内心穏やかではないんである。



登山の成果というのは、まるで何かの研究成果のように競われる。
つまり、「その困難をクリアした最初であること」に評価が集まる。

藤原正彦氏がその著書の中で、証明されていない定理が、他の数学者によって先に解き明かされてしまった時の、なんとも言えない賞賛と悔しさの入り混じった感情について、著書の中でユーモラスに書いていた。

Hは、自分にはその気持ちが実によく分ると言っていた。
そして、今まさにその感情の渦中にいるのだろう。

そのことを私に指摘されたくないのか、
表向きは「寝取られたならそれでもよし」とでもいうような涼しい顔をして、
でもしかし、始終考え事をしているのである。

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