Aと二人、凍った湖を見に出かける。
「湖面にできた氷の隆起は、神の渡ったしるしである」とは、 ギリシア神話に匹敵するような古人の感性ではないだろうか。
凍て付く寒さを堪能した後は、 「歴史的芸術的公衆浴場」とでも言うべき温泉へ。 製糸業で一財を成した財閥の二代目がつくった保養施設である。
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重々しいドアや大理石や赤絨毯の休憩室には、 ワカサギの佃煮や野沢菜やみかんが並べられ、日焼けした家族連れがごろ寝してテレビのマラソン中継を見ている。
国会議事堂みたいに贅が尽くされている建築物が、大衆娯楽の場として提供されている。 皆さんゆっくり楽しんでくれ給えという、財閥御曹司の声が今にも聞こえてきそうである。
一財を成した者が、ひとたび地域福祉とか啓蒙を思い立つと、 行政など足元にも及ばない財産を庶民に残すことがあるものだ。
2007年01月27日(土) 2006年01月27日(金) ビーフとストーブ
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