浅間日記

2007年10月29日(月) どんぐりと山ねこと私

山から下りて、夕暮れ時に家に戻る。

夕飯を食べ終わり、Aを横に座らせて「どんぐりと山猫」を読む。
宮澤賢治のこの名作は、裁判の話なんである。

「谷川に沿ったこみちをかみのほうへのぼっていく」主人公の一郎君に、
本日の自分が、なんだかオーバーラップする。

黄金色の草地こそ今はもうないけれど、
確かに私も栗の木や滝やきのこと対話をしたように思う。

Aが気に入ったのは、手紙の文章を褒められた馬車別当の男が、
いきをはあはあして、耳のあたりまで真っ赤になって喜んでいるくだり。

それからやはり別当が、山猫のたばこがほしいのを我慢して、
気をつけの姿勢のまま涙をぼろぼろこぼしているところ。

大人の私が気に入ったところは、野暮になるので書かない。
ただ、俗世の在り様を美しいファンタジーに溶け込ませる賢治のセンスは、
まさしく天才のものだと感心した。

かくしてAも私も、優れた文学作品の余韻にひたりながら、静かに眠りに落ちた。

2005年10月29日(土) 宗教的ドーピング
2004年10月29日(金) 陛下万歳


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