Hも私も、確定申告の時期である。
二人で諸々の書類や領収証やらを整理する。 コーヒーを淹れて、休憩しながらとりとめのない話をする。
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もう一生、標高1500m以下に下りてこないでほしいと数日前に悪態をついたこの男が、 この幾日かはホスピタリティの権化と化し、私の不機嫌をおさめるため全力を尽くしていたことぐらい、 押し黙り続けていた私にだって、さすがにわかっていた。
なにしろ悪天候でむやみに動くことの愚を熟知しているこの男は、 言いたいこともあるけれどとりあえずここは平身低頭で嵐が去るのを待つ、 という姿勢をつら抜いている。 ちょっと卑怯なのである。
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こんなにされては、山から下りてこないのは私の方みたいではないか。 怒りの山頂の、息苦しい高所にいて、 女友達相手にああだこうだと叫んでは、返ってくる自分のコダマを確認したりしている。
麓までやってきて「下山道はここだよ」と煌々と照らされ、 話し合いが必要な、事の本質を留保してホイホイと下りてしまうのは、 多分女の浅知恵なのだろう。 わかっているが、なにしろ馬鹿馬鹿しいほど照らすものだから、仕方がない。
それに、もうこの人は私にそういう面倒はやらないかな、とも思っていたので、 そのことも少し嬉しい。
2004年03月06日(土) 家畜人ヤプーである状態
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