「ハンセン病問題に関する検証会議」の最終報告。
「日本の絶対隔離政策で、科学的な根拠が示されたことは最初から最後までなかった」、 と始まるこの検証結果の報告書には、冷静に真実を検証しようという作業の結果が現れている。
国や医療従事者などの責任は明確に記しつつも、誰か一人をスケープゴートにしてお手軽に解決しようとしない、秀逸なレポートだ。 再びこのようなことを起こさないように、今まだ続く被害を救済するために、という熱意と悲願が伝わる。
最終報告書に記された検証結果のうち、特に私がまったく忌むべき事実と感じ、またこの漠とした遠因をよくぞ分析し文書にしてくれたものだ、と感心するのは次の4点。
一.新憲法の「文化国家」「福祉国家」の理念と、国立療養所への全患者収容の考えが結び付けられた結果、入所者らは基本的人権の享有者ではなく「新しく明るい日本」「健康の日本、無病の日本」の犠牲者となった。
一.戦後は保健所が地域からハンセン病患者をなくす「無らい県運動」の第一線機関であったため、運動のすそ野は医師や保健婦をはじめとして著しく広がり、これらの「善意」が戦前の衛生警察の権威以上に全患者収容に威力を発揮した。
一.ハンセン病も精神疾患対策も、諸外国に対する体面から始められた点で 共通している。隔離収容は国民の偏見を固定化し、差別を助長した。
一.報道記者の多くはハンセン病問題に不勉強で、療養所に足を踏み入れることもなかった。 報道が気付かなかったということは、社会的に問題が抹殺されたも同然だった。
* この四点セットには、日本人が陥りやすい危険なポイントが、明確に現れている。
科学的事実というものがガリレオの時代のように置き去りにされる弱々しさも、マス・コミュニケーションの脆弱性も、結局のところ、社会を客観的に見るために必要な個の自立が成されていないせいだ、と感じる。
そういう傾向というか特質は、減速するどころかむしろ最近では ますます加速の方向にあって、とても危ないなあと、思うのである。
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個の自立ということについては未だ考察しなければいけないことが沢山あるような気がするのだけれど、今日のところは自戒の意味を込めて、ここまでを記録しておこうと思う。
2004年03月02日(火) 保育士による景気動向指数
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