2012年09月01日(土) |
アール・エドレッドの場合(仮)・8 |
先日の会話を思いおこせば行き先を特定するのは簡単だった。あとは容姿を思い浮かべるだけ。
しばらくして、男は見つかった。 声をかけようとして、ふと変な思いにとらわれる。本当にそんな人物に自分は遭遇したのか? 周りが言うように、あれはただの思い過ごしではなかったのか。 (「忘れろ。それが貴様の身のためだ」) だれかから冷たい忠告を浴びせられたようなきがして足をとめる。周りにはだれもいない。 だからどうした。 「幽霊が怖くて記事なんか書けるか!」 誰にともなく反論すると後ろ姿に呼びかける。 「リザ!」 声にふりかえったのは藍色の髪に紫の瞳の男。間違いない。 「君は――」 「アール・エドレッド」 この前会ったばかりなのに名前も忘れちまったのか? こっちはさんざん探し回ったというのに。 「オレのこと覚えてる?」 「約束しただろ。旅行記を読ませてやるって」 実のところ記事はまだ書き上がってない。けど約束した以上、声をかけないわけにはいかない。そもそも彼自身が大きなネタなのだ。ここで捕まえなくていつ捕まえる。 「いいよ。いつでも読むよ」 幸い時間はいくらでもあるんだ。紫の瞳の男はそう言って心から嬉しそうに笑った。
過去日記
2005年09月01日(木) おさわがせしました。 2004年09月01日(水) とある姉弟の会話(6回目くらいにしておこう) 2003年09月01日(月) 「桜」
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