つれづれ日記。
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2012年08月31日(金) アール・エドレッドの場合(仮)・7

 だが次の日も、その次の日も。やはり男は現れなかった。
 このままではらちがあかない。アールは自分からうってでることにした。
「幽霊ですか?」
 小首をかしげるのは黒髪に緑の瞳を持つ少女。
「前にも手伝ってくれただろ? 頼むよ」
 本当は幽霊と確定したわけではないのだが、対策は早いにこしたことがない。いぶかしがる彼女にアールはいきさつをかいつまんで話した。青ずくめの男。誰もが覚えていそうなのに、彼以外誰も見たことも聞いたこともないという。やはりアールの思い過ごしだったのかというとそうではなくて。
「クレン、どう思う?」
 近くにいた精霊に話しかけるとよくわからないよという声がかえってきた。
(「ボクと同じ精霊が実体化したってことならわかるけど。だったらそれを見た人間が覚えてるはずだよね。でもこの人が言ってることが本当なら、精霊とは違う存在なのかもしれない」)
 だとしたら、やはり幽霊だというのか。
「会ってみないことにはわかりませんね」
 話を聞いただけでは本当にわからない。幽霊や悪霊であれば除霊する必要があるし、人間であれば話を聞いてみたい気持ちもある。
「その男の人は何か言ってませんでしたか? やりたかったこととか目的地とか。もしかしたら何かの手がかりになるかもしれません」
 リーシェの助言にしたがい先日の会話を思いおこしてみる。結果的に海竜亭でご飯をごちそうになり旅行記にまつわる会話をした。
 ……本当にそれだけだったか? そもそも男はなぜ道で倒れていたのか。

『アンタ、なんであんなところに倒れてたんだ?』
『海を離れてたからかな。あと探し物をしていて』
『探し物?』
『探し物というよりも捜し場所かな。知らないかい? ――って場所を――』

「思い出した!」
 ぽんと手をたたいてうなずく。男は確かに言っていた。探し物を求めてさ迷う男。幽霊にぴったりではないか。
 わかったのなら話は早い。
「俺が連れてくるから。その時は頼むよ」
 熱心なアールの懇願に根負けして。本人を連れてくることを条件に、リーシェはしぶしぶ彼の提案を承諾した。






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