つれづれ日記。
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2012年08月17日(金) 伊織の手紙−海より−(仮)・15

「イオリ?」
 いつもより瞳が大きく見えるのは眼鏡をはずしているから。
 服越しに心臓の音が伝わるのは相手が服を着ていたから。
「……うん。大丈夫」
 そう言って体にもたれかかる。これらの情報から導かれるものはただ一つ。
「ユータが助けてくれたの?」
 しかも服を着たままの状態で。砂浜から海まで距離はあったはずなのに。
 問いかけたかったけど体が疲れていたのと彼の表情を見て口をつぐむ。目がいつになく真剣で、安否の確認からずっと何も離さない。元々多弁ではなかったけれど、それにしたって静かすぎる。
 ほどなくして海から岸辺にたどり着いて。ようやく抱えていた腕をおろしてくれた。
 足に触れる砂の感触がひどくなつかしい。大地ってこんなにも安心できるものなんだ。そんな感慨にふけっていると。

 ぱしん。

 頬に鈍い痛みがはしった。

 何が起こったのかわからなかった。頬の痛みよりもぶたれたという事実が衝撃的で。 
「お前は何をしにここにきたんだ」
 ましてや目の前の相方に怒られる日が来るなんて。
 眼鏡がないからか今日の相方は別人に見える。
 後にも先にもユータに真剣に怒りをぶつけられたのはこの日が最初で最後だった。






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香澄かざな 




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