2012年08月16日(木) |
伊織の手紙−海より−(仮)・14 |
意識を手放そうとした瞬間、ぐいっと腕を捕まれた。 荒々しいなんてものじゃない。そうしなければ何かを手放してしまうような。力加減なんて考えてられない。とにかく必死といった体がよくわかる。 「つかまれ」 何も考えられない。とにかく腕をつかむことに必死で、相手がだれなのか確認する余裕もない。助かりたいただ一心で腕をつかんで必死にすがりついて。 「あと少し泳ぐ。それまでもつか?」 とにかく必死に声の主に抱きついて。その場を乗り切るのにただただ必死で。 「もう少しでつくから……イオリ?」 そこで、わたしの意識は途切れた。
あの子は大丈夫だったのかな。せめて親御さんの元へ返してあげたかったな。 医術を学ぶために白花(シラハナ)からやってきたのにまさかこんなところで夢ついえてしまうなんて。
「本当に、ありがとうございました」 「お礼ならこいつに言ってください」
わたしって無鉄砲なところがあったから。それがいけなかったのかな。
「シャーリィもお礼を言いなさい」 「お姉ちゃん、大丈夫?」 「こいつは体鍛えてるから。あと少しで気づくと思う」 聞き慣れた声。ここで、はじめて自分が助かったのだと言うことに気づく。 お礼の言葉とともに子どもが後にする気配。よかった、無事だったんだね。 ……じゃあ、わたしは誰に助けられたんだろう。 ぼうっとしていた頭を動かしてまぶたをゆっくりと開く。そこにあったのは見慣れたダークグリーンの瞳。 「大丈夫か?」
わたしを抱え上げていたのは他ならぬ相方――ユータス・アルテニカだった。
過去日記
2007年08月16日(木) 「佐藤さん家の日常」日常編その7UP 2005年08月16日(火) 書きたいなーとは思ってるもの 2004年08月16日(月) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,18UP+α(愛とも言わないこともない) 2003年08月16日(土) 接続って……
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