2012年08月11日(土) |
伊織の手紙−海より−(仮)・10 |
「リオさんは泳がないんですか?」 わたしと同じく水着の上に上着をはおったままの格好で。 「俺は泳ぎ得意じゃないから」 そう言ってストローをくわえジュースをすする。 リオ・シャルデニー。わたしより少し背が高く、見ようによっては同世代の男子に間違われるけどれっきとした成人男性だ。 「俺としては海中にいるよりもこうして人間チェックをしておいた方が有意義」 聞こえ方によっては怪しい物言いだけどリオさんの場合は少し違う。初めてあった時も「いい体つきしてるよね」だったし。変質者かと警戒したけど実際は『骨格と筋肉とのバランスがとれた、将来の有望株』らしい。彼としてはほめてくれたらしいけどわたしにとってはちっとも嬉しくない。 「あそこの彼はもう少し運動した方がいいね。バランスが悪すぎる」 「そっちの彼女はやせすぎ。女の子ってどうしてこうやせようと思うのかなあ。成長期に食べておかないと成長できないのに」 彼はわたしと同じくグラツィア施療院につとめる整体師。普段はおじいちゃんやおばあちゃんの腰痛や関節の痛みを和らげるのがお仕事だけど時には不慮の事故でなくしてしまった腕や脚を作ったりと医師のイレーネ先生とは違った分野のスペシャリストだ。 「あと五年もしたらりっぱな骨格ができあがるのに。もったいないよなあ。これじゃあ宝の持ち腐れだ」 だけど、使い方が若干間違っているような気もするけど。手渡されたジュースをすすりながらぼんやりとそんなことを考えた。
過去日記
2006年08月11日(金) 「EVER GREEN」10−0UP 2005年08月11日(木) 京都日記その3 2004年08月11日(水) 中間報告・多分四回目 2003年08月11日(月) どうしよう
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