つれづれ日記。
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2012年05月14日(月) 白花(シラハナ)への手紙(仮)・93

「それで今度はここに来たってわけか」
 イレーネ先生が苦笑する。
 メリーベちゃんを連れてやってきたのはグラッツィア施療院だった。何がどうツテになるのかわからないけどここにいけばわかると楚羽矢さんに言われたからだ。
「これは──の絵ですわね」
「詳しいな。よくわかったね」
 メリーベちゃんが漏らした声にイレーネ先生が感嘆の声をあげる。
「こんなのわかって当然ですわ」
 そうなんだ。わたしはこの前先生に聞くまでは知らなかったけど。そう言うと、勉強不足ですわと鼻で笑われた。
「ごめんなさい。ティル・ナ・ノーグの知識はまだまだ勉強中なの」
 何せ故郷の白花から来て数ヶ月しか経っていない。
「あなたはここの人間ではありませんの?」
「お父さんはここで生まれ育ったけど、わたしが生まれたのは白花だよ」
「シラハナってここから西にある島国のことですわよね。こことは違って女王が治めていると言うのは本当ですの?」
「うん」
 正確には代々の女王──姫巫女様がだけど。一庶民のわたしは話でしか聞いたことがないし、本当のお姫様には一度もお目にかかったことはない。
「イオリは故郷に帰りたいとは思いませんの?」
 出されたお茶に口をつけながらメリーベちゃんがつぶやく。
「時々は思うけど。やりたいことがあるって飛び出してきちゃったから。だから、自分でいいと思うまでは帰らないし帰れないかな」
「わたくしとは違うのですね」
 そう言った彼女の顔は今までよりずっと大人びて見えた。






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