つれづれ日記。
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2012年05月15日(火) 白花(シラハナ)への手紙(仮)・94

「観光で来たんじゃなかったの?」
 てっきりそうだと思ってた。何かしらの意図があったとしても、まだ小さいんだ。遊びまわりたい年頃だろうし。
 でも実際のお姫様の現実は想像よりもはるかにきびしいものだった。
「お兄さまに連れられてきましたの。ほんの少しだけ羽を伸ばしてきますと置き手紙を書いてきたから大丈夫ですわ」
 あっけらかんという女の子に絶句してしまう。
「それに。お兄様もわたしがいない方が安心するでしょうし」
 そう言った女の子の横顔は年相応に寂しそうで。もしかしたら、この子は大人びているぶん、大変な目にも遭ってきたのかも。
「メリーベちゃんはお兄さんが好き?」
「好きに決まってるでしょう? あんなに素敵な男の方、世界中どこをどう見てもいるわけないですわ」
「なら大丈夫」
 小首をかしげる女の子に説明する。
「理由はわからないけど、お兄さん達はメリーベちゃんが大好きだからここに連れてきたんじゃないのかな」
「意味がわかりませんわ」
「ごめんなさい。うまく言えないんだけど──」
 ご兄弟にはあったことはないけれど、大切にされていなければひねくれたままで終わっているはず。
「だからわたしは手紙を書くことにしてる」
「手紙を書くと何かいいことが起こりますの?」
 起こるかはわからないけれど。家族との約束だから。
「今日一日であったこととか。いいこととか悪いこととか全部。たくさん伝えたら何かが返ってくるんじゃないかな」
「それはあなたの想像でしょう? いいかげんにもほどがありますわ」
 確かに想像にすぎないけど。でも当たっているぶんもあるんじゃないかな。そう思った。
「お客様──」
「メリーベですわ」
 ふんと鼻をならすと女の子──メリーベちゃんは告げる。
「着いてきなさい。最後までお見送りするのが宿の従業員の役目ではなくて?」
 女の子らしい、可愛い命令に笑ってはいとうなずいた。






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