2012年05月04日(金) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・84 |
大の男衆に囲まれて黙々とサンドイッチを食べる姿は異様だった。『やっぱり帰る!』とニナちゃんが途中で逃げ出したのも頷ける。ちなみにここにいるのはユータスさんに、ウィルくん、カルファーさんとユータスさんの兄弟子にあたるライアンさんだ。 「まさかと思うけど、家でも『あんた』とかましてや名前を覚えていない、なんて言わないだろうな」 わたしがここまできた経緯をかいつまんで話すと、ライアンさんの片眉がピクリと上がった。と、同時にユータスさんの肩もぴくりと動く。知り合って半月はたつし日常的にとは言わなくても顔はそれなりに合わせている。まさかと思うけど、本当に名前もわからないようだったら怒るし落ち込む。 結果的は最悪の事態にはならなかった。けれど。 「えーと……イオリ?」 呼び捨てだった。これが普通なのかもしれないけど。 「イオリ姉ちゃんも、いつまでもさん付けって他人行事じゃない?」 ウィルくんの声に、今度はこっちがうならされてしまう。ユータス・アルテニカさんという名前はわかる。でも、アルテニカさんだと家の誰のことを言ってるのかわかりづらいし、ユータスさんとは呼んでいるものの、正直違和感があった。 ダークグリーンの瞳と薄茶色の髪。それを聞いて連想させるものはわたしにとってひとつしかない。小さい頃からずっと一緒にいてくれた、わたしの友達。わたしの相棒。その子の名前は。 「……ユウタ」 「ん」 また実家の愛犬の名前を口にしてしまった。呼ばれた方にも違和感なくうなずかれてしまった。 「ちがうんです。いきなり変な呼び方してしまってごめんなさい。これには、その」 「『ユータ』じゃないの?」 「一応、ユータスさん、なんですけど」 「ん」 「……じゃあ、ユータで」 とっさの呼び名がこれから先も定着していくとは当時は思ってもみなかった。
過去日記
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