2012年04月27日(金) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・77 |
「そういえばお兄さんは?」 今日は特に用事もなかったので部屋に閉じこもって本ばかり読んでいた。台所に来たのもついさっきだけど、ユータスさんの姿が見えない。 「お兄ちゃんならお仕事に行ったよ」 「お仕事?」 初対面のことを思い出す。そう言えば仕事がひと段落して外に出たらペルシェに出会ったって言ってたっけ。それがここまで繋がるとは思わなかったけど。そういえば、お仕事って何をやっているんだろう。今更ながら聞いてみると、『工房』という声が返ってきた。 「何かを作る場所になるんだっけ?」 「ああ見えて、お兄ちゃんってすごいんだよ。規格外なんだから」 規格外。文字通りの意味なんだろうけど、何だか別の意味合いも含まれている気がするのはどうしてなんだろう。 「気になる?」 ウィルくんに顔を覗き込まれ素直にうなずく。ひょろっとした男の子が一体どんな仕事をやっているんだろう。わたしみたいに医学を志して──なんてことはないから、何かの作業なのかな。一体どんなことをやっているんだろう。それは純粋な興味と好奇心。 「これからお兄ちゃんにお弁当を届けにいくところなんだけど、イオリちゃんも行かない?」 「初対面のわたしが行ってもいいところなの?」 むしろ邪魔になるんじゃないか。そう思って尋ねると一人だと怖くてむさ苦しい心細いもんとなんとも可愛らしい声が返ってきた。だから、医学書片手にニナちゃんとお兄さんの工房まで足を運ぶことになった。
この時、もう少し考えるべきだった。ニナちゃんが言っていた、怖くてむさ苦しいという意味に。
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