2012年04月23日(月) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・73 |
「ごめんください」 店内に声をかけるけど、返事はない。 「誰かいませんか?」 今度はさっきより大きな声で呼んでみる。やっぱり返事はなかった。仕方がないので店舗を眺めて時間をつぶすことにする。 目の前に広がるのは大量の緑。みずみずしい新緑の葉に、色とりどりの花が咲き乱れている。イレーネ先生の地図はここであっているはずだし、お花を注文していたんだろうか。 「あら? どなたかしら」 声にふりむくと、そこにはエプロン姿の長身のお姉さんがいた。 お店の店員さんなんだろうか。薄水色の簡素なワンピースに緑色のエプロンを身につけている。白がかった金色の髪に人間には見られないとがった耳。その容姿を形どる種族といえば―― 「……エルフ?」 思わず口にしてしまい、慌てて口をおさえる。初対面の方にあんまりなもの言いをしてしまった。 「エルフを見るのははじめてかしら?」 「すみません。すっかり見とれてしまいました」 下手にとりつくろっても仕方ないので素直にうなずいた。高貴で美しく、とがった耳が特徴的な人間とは異なる長命の種族。森の奥に住んでいて人間とあまり関わりたがらない、だったような気がする。 なけなしの知識を頭の引き出しからとりだしてみる。目の前にいる女の人は確かにエルフなんだろう。でも優しげなアイスグリーンの瞳からは人を敬遠しているような雰囲気は感じられない。 「はじめまして。私はカターニャ・ヴォロフ。見ての通り、ここ『猫の髭(ひげ)』で薬屋を営んでいるわ」 「お花屋さんじゃないんですか?」 失礼な声が再び口からもれてしまった。
過去日記
2010年04月23日(金) 委員長のゆううつ。20 2005年04月23日(土) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,52UP 2004年04月23日(金) 「EVER GREEN」5−12UP
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