2012年04月09日(月) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・60 |
「あの、その格好」 同じ年くらいの小柄な女の子。その子はこの街にはいささか不つりあいな着物にエプロンを身につけている。って―― 「着物?」 「そう。着物だよー。あら? あなたも着物きてるんだね」 着てるもなにも、わたしの国の正装。普段着だし。それにしてもエプロンに描かれている紋様。どこかで見たことがある。着物を着ているから白花にゆかりのある人で間違いないんだろう。 じゃああれは、一体どこで―― 「……すー」 そうだった。まずはこの状況をどうにかしないといけないんだった。 「あれ? ユータスくんじゃない」 「しってるんですか?」 「時々ニナちゃんに連れられてきてますから」 ここでもニナちゃんがらみだった。 「知り合いにここの場所を紹介されたんです。行く途中で彼が眠っちゃって」 そ言ってクレイアから手渡された地図を見てもらう。地図を手に取りコバルトブルーの瞳が真剣にのぞき込んだ後。 「なんだ。うちのお店じゃない。着いてきて」 そう言うと、道を迷うことなくすたすたと歩き出した。力があれば道ばたで倒れた男の子を担いではこびたいところだけど、仕方がないのでほおをぺちぺちとたたく。 「いい加減起きてください。ユータスさん!」 曲がって、さらに曲がって突き当たりをまっすぐ進んで。進んでは止まって、止まってはまた進んで。 ようやくたどり着いた場所は。 「おいでませ。藤の湯へ!」 懐かしい大きなたてものがそこにはあった。
過去日記
2011年04月09日(土) 「クール系お題」その6 2010年04月09日(金) 委員長のゆううつ。8 2004年04月09日(金) お花見
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